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ソニー第三世代4Kに見た“強さの秘密”

4Kテレビの本格普及元年だった2013年、ソニーのこのカテゴリーでのシェアはなんと7割に達しました。今夏、東芝が中型画面を含む幅広いラインナップ化を果たし、強力な販売網(パナショップ)を持つパナソニックが4Kに参入し、ソニーのシェアは5割まで落ちましたが、参入4社の中で依然飛び抜けた数字です。なぜ、ソニーの4Kはかくも強いのでしょうか。その答えを新しいKD-X9500B系に探してみましょう。

大橋 伸太郎

執筆者:大橋 伸太郎

テレビガイド

ブラビア4Kが第三世代に発展。三系列全10モデルが新たに誕生

ソニーは同社第三世代の4Kブラビアを発売します。従来二系列だったラインナップが三系列に分化、最大85Vから最小49Vまで実に5サイズ全8機種を揃えてきました。

4K普及元年の昨年(2013)ソニーは4Kカテゴリーで実に7割のシェアを獲得しました。東芝が40Vまで含む幅広いラインナップを実現し、強力な販売網を持つパナソニックが4Kに新規参入した今夏、さすがに5割前後まで下がりましたが、それでも4社中圧倒的な強さを誇ることに変わりがありません。それでは今期の4Kブラビア三系列のサイズ展開と相違点について見ていきましょう。

三系列を通じてHDMI2.0を採用、4K60pに対応。H.265/HEVCデコーダーを内蔵、セキュリティ規格のHDCP2.2に準拠します。

最上位のKD—X9500B系は85Vと65Vの二機種。全ブラビアを通じて最大サイズのKD−85X9500Bは唯一IPSパネルを使用します。今回の性能上の本命がKD−65X9500BでVAパネルを使用します。どちらも直下型LEDバックライト部分駆動を採用し、後で詳述しますが昨年のX−tended Dynamic Range を発展させた同PROを新たに搭載します。
音質への独自のアプローチもブラビアのCI

磁性流体スピーカーを強調したデザインを9200系が踏襲


次位がKD−X9200B系で65Vと55Vの二サイズ。LEDバックライトがエッジ型部分駆動になりますが、X−tended Dynamic Range(PROでない)を搭載します。昨期話題を呼んだ9200A系の左右に磁性流体スピーカーを配置した特徴的デザインを継承しています。

X8500Bはエッジ型LEDで面駆動、X−tended Dynamic Rangeは搭載しません。70、65、55、49Vの4サイズを展開、本格普及の牽引車の使命を担い登場のベーシックモデルといえるでしょう。

新しい4Kブラビアで4K試験放送のワールドカップブラジル大会を見ると…

ブラビアの新しい3系列を比較、視聴する機会に恵まれました。この6月からスタートした4K試験放送の各種番組から視聴を始めましょう。

4K試験放送は8Kからダウンコンバートした「FIFA2014ブラジル大会」の録画映像のように目から鱗の優れたコンテンツがある一方、14年前にタイムスリップしてフルハイビジョン試験放送をもう一度見せられているような鮮鋭感の足りないものも混在し、玉石混交する状況といえます。

4K試験放送はリアルタイムエンコードであるため情報の処理量が非常に多く、全面が動く映像は苦しいようです。これは全機種とも同じ。W杯サッカーの画質がよいのは8K撮影をダウンコンバートしてリアルタイムエンコードしているため、前処理が出来ていると推察されます。

全てのカメラが4Kであるわけではなく、スタジアムの天井からの俯瞰撮影は低解像度です。その落差がハイビジョンに比べ大きく感じられます。4Kの広角撮影は周辺の収差、フォーカスの微妙なずれまで暴き出し目を瞠ります。

従来の4Kテレビはハイビジョン中継のアップコンバートを見ていたわけですが、ネイティブ4Kの60pは従来気になった動きの違和感がなく、なめらかで自然な4K動画。ソニーのネイティブ4Kプロジェクターでも体感出来なかった境地といえるでしょう。

ブラビアの優れた機能にモーションフローがあります。4K試験放送のW杯サッカーでインパルスモードを選択するとちらつきが出て、切だと芝目のざらつき(ノイズ)とややぼやけが見受けられます。モーションフローはよく出来ていて、標準の「なめらか」が動きの豊かな被写体にややぼやけはあるのですが、サッカーの場合は最も見やすいようです。ちなみにブラビアには「サッカーモード」があり、選択すると音声がバーチャルサラウンドになります。

W杯大会以外の4Kコンテンツは正直言って画質がかなり落ちます。薪能の夜間撮影や鎌倉江ノ島の映像は感心しませんが、河口湖の映像は。手前の浮島の背景の霞の掛かった岸との立体感が素晴らしく4Kの威力を見せつけます。富士山の映像は山中湖の水面の漣など、従来だったらブロックノイズに妨害されるものが眼を凝らしても、自然な動きで描写されています。

フラグシップのX9500B系に搭載の
“X-tended Dynamic Range PRO”に注目!

さて、ソニーブラビアのフラグシップ、KD-65X9500Bは、65型VAパネルを搭載、4Kブラビアとして初の部分駆動直下型LEDバックライトを搭載します。昨季のKD-65X9200Aはエッジ型部分駆動でした。

ブラビアXシリーズに加わった新技術に“X-tended Dynamic Range PRO”があります。映像の暗い部分で生まれる余剰電流を明るい部分で利用することでピーク輝度を伸長させる一種の「オーバードライブ」機能で、ソニー技術陣は「突上げ」という表現をしますが、「XDR」と略記します。昨期の製品もオーバードライブを搭載したがダイナミックモード等に限定された。X9500Bではオーバードライブの適応範囲を映画系モードにまで拡大したことが注目されます。

下位のX9200BにもX-tended Dynamic Rangeが搭載されるが、直下型のX9500Bの場合、輝度向上値が3倍(X9200Bは2倍)と効果の度合いがずっと大きいのです。

他に超解像エンジン“4K X-Reality PRO”を搭載、デジタル放送、ブルーレイディスク、ネット動画等の特性に応じて適切な超解像処理とアップスケーリングを行います。4K解像度の動画/静止画の場合も超解像処理を行うことも特長。

4K試験放送を見る範囲では今回の3系列(9500、9200、8500B)にそれほど大きな画質上の差はありません。しかし、ブルーレイディスクの高画質コンテンツを入力すると三系列の差が露わになります。

同社のプロジェクターの場合、3種類に分かれるマニアックな設定でしたが、テレビではエンドユーザーに配慮し、映画モードに「シネマ1」と「シネマ2」が用意されます。シネマ1はソースに忠実に味付けしない画質、シネマ2は家庭で映画を見る上でソニーの提案を盛り込んだ画質、という分かりやすく対照的な画質設定になっています。どちらも色温度はD65ですが、シネマ2は1をベースに多岐に渡るチューニングがされています。

今季のKD-65X9500Bでは、昨期はダイナミックモード等での使用に止めていたオーバードライブを“X-tended Dynamic Range PRO”(以下XDR)としてシネマ2に適用しました。ビデオグラムを家庭で再生する場合、映画館の上映画質は参考にはなるが金科玉条のごとく範とすべき必要はないと筆者は考えます。

映画館のスクリーン画面のコントラストは条件のよい館でも1500対1程度。それに対し現代の高画質テレビのコントラストは最大1000000対1に達する(KD-65X9500Bは数値非公表)ポテンシャルを持ちます。ディスプレイの高性能を自由に活かせる環境のある家庭では、ハイコントラスト化で高画質ソースの潜在情報を引き出していくのは現代の映像ファイルならではの特権といえるでしょう。

KD-65X9500Bでシネマ1とXDRがオンになるシネマ2を同一ソフトで切り替えてみると、XDRは決してオールマイティではなく映画によって適不適があることが分かります。しかし、ディレクターズインテンション(製作者本来の意図)に寄り添い本来こうあってほしい姿を復元するという点でしばしばシネマ1を超える説得力を発揮することが分かります。市中劇場での上映やビデオグラム(放送/パッケージソフト)の撮影・編集・圧縮プロセスで“失われた輝き”を取り戻し映像に生気を吹き込む試みとして注目していいでしょう。

他に筆者が映画視聴時に気になるのがシネマスコープサイズの映画を表示した時の黒帯の黒浮ですが、直下型LED部分駆動のKD-65X9500Bはどんな画面が入力されても無画部分の黒が深く締まっています。しかし完璧ではなく光漏れや内部反射がかすかに見られる場合もあります。KD-65X9200Bはエッジ型LED部分駆動に止まりますが、黒の締まりはかなり秀逸です。

上位二機種に比べエッジ型LED面駆動のKD-65X8500Bは黒が締まりません。映像部分のコントラストや階調表現もやや甘いようです。

第三世代4Kブラビア三系列。ガイドのお薦めはスバリ…

 さて、ブラビア第3世代4Kの総合評価です。4K試験放送を見た結果では、揃って4K60pに対応する三系列の差は意外に小さく、戦略モデルのX8500Bのコストパフォーマンスは高いといえるでしょう。しかし、4Kが試験放送に止まりブルーレイディスクが中心の現状(4KBDの登場は遠くありません。)、映画画質を重視した場合、上位ニ機種からの画質の隔たりが目立つように思います。

ずばり、筆者はオールアバウト読者にKD-65X9200Kをお薦めします。映画のコントラスト表現という点でほぼ満足出来、ネイティブ4Kの受信画質は申し分ありません。さらに画質にこだわるなら最上位のKD-65X9500Bのシネマ2で自分なりの映画画質の追いこみを楽しんでください。


ソニーは初代の4Kブラビア以来、販売店店頭で4Kというスペックの目新しさより高画質の地道なアピールに継続して取り組んできました。今回XDRをシネマモードに搭載のX9500Bを筆頭に、さらに映画の画質に磨きを掛けました。グループ内で業務用4kカメラ(D65,55)を生産し、ハリウッドメジャースタジオを擁するソニーらしい一貫性が窺えます。何をどうみせるか戦略の明解さがブラビア4Kの強さの源泉といえるでしょう。

 


 

 


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