楽しいことがどこまでも続いていく物語『せんろはつづく』
思わず童謡を口ずさみたくなる『せんろはつづく』という題名。カラフルな色のオーバーオールを着た子どもたちが、張り切って野原に枕木を敷き、線路をつないでいく様子は、これからのお話の展開への期待が膨らみ、しょっぱなから心が躍ります。楽しいことは自分たちで作ってつなげていく! それがどこまでも続いていく! 子どもの想像力とパイオニア精神を存分に引き出して膨らませてくれる絵本です。
「こんなとき、どうする?」柔軟な発想、物作りの喜び!
「せんろは つづく どんどん つづく のはらの まんなか どんどん つづく」……。リズミカルな文章で読み手もこれからの展開に気持ちが高まりますが、やはり、野原はいつまでも続きません。力を合わせて線路をつなげていく子どもたちの前に、早速大きな課題が立ちはだかりました。「やまが あった どうする?」。一瞬考えた後、勢いよく山にトンネルを掘って進んでいく子どもたち。ドリルで穴を掘ったり、掘った土をリヤカーに載せていったりする重労働に取り組む子どもたちの表情は真剣そのもの。ようやくトンネルが完成して明るい外の景色が開けましたが、すぐに川に遭遇します。「かわが あった どうする?」。こんな調子で線路をつなげていく先には解決しなければいけない問題が続きます。お子さんと初めてこの絵本を読む時には、「うん?どうするんだろう?」と一瞬、一緒に考えてしまうでしょう。でも、登場する子どもたちは、時に果敢に大仕事に取り組み、時に無理のない方法で、ひたすら線路をつなげていきます。みんなで物を作り上げていく喜びに満ちた、子どもたちの躍動感あふれる姿に、あっという間にページが進んでいきます。
パイオニア精神にあふれた子どもたち
立ちはだかる課題に動じることなく、自分たちで手だてを考えて目的を達成していく小さな子どもたちの姿は、本当にかっこいいのです。軽々と野を越え山を越え、川を越えて線路をつなげていくように見えますが、実際に何か困難な事態に直面した時、意見を出し合ってそれをまとめて結論を出し、力を合わせて作業をしていくというのは、とても難しいことでしょう。だからこそ、大人の目から見ても、前へ前へ進んでいく子どもたちの一致団結したすがすがしい姿は、憧れのような感情を持って眺めてしまうのかもしれませんね。線路が完成したところから、旅が始まる
おもちゃの線路をつなげようとしてうまくできず、ブツブツと一人で文句を言いながら試行錯誤をし、何とかつなげていく小さな我が子の様子を見ていると、思わず「せんろはつづく、どんどんつづく……」とつぶやいてしまいます。家族が手伝おうとすると、手出しされるのをいやだったり、結局は手伝ってもらって線路がつながって嬉しそうな表情を見せたり……。そんな様子を見ていると、この子はいずれ、家族以外の仲間たちの世界に入っていく中で、協力して何かを作り上げていく体験もしていくのだなあという気持ちになります。そんな乗り物好きで1人遊び真っ盛りの小さな子から、お友だちと力を合わせて何かを作り上げることの喜びを知ってきた年代の子まで、長く楽しめる絵本『せんろはつづく』。絵本の子どもたちが地道につなぎ合わせてきた線路は、やがてスタート地点とつながります。「つながった!」の先に、まだまだ道のりが果てしなく続いていく余韻を楽しんでくださいね!