変化し続けたゴジラ・デザインのディテール
学生時代にコアな特撮マニアが結構いて「モスゴジ一番」とか「いやキンゴジだ」「やっぱり初ゴジ」などと熱く語り合っていたのですが、さっぱり意味がわかりませんでした。そして改めてビデオなどを観なおして、そのデザインの差を知ることに…。ちなみに「キンゴジ」とは1962年公開の「キングコング対ゴジラ」というゴジラシリーズ3作目に登場したゴジラ。やや平たい顔と太い足が特徴で人気があります。このキンゴジから足の指(爪?)が3本に変更されました。
1954年の初代ゴジラは下半身が太く手は小さめ、ティラノザウルスなど恐竜感のある安定感のあるどっしりとした造形です。そして、よく見ると初代ゴジラには耳がついています。何よりも決定的にゴジラ・デザインを決定づけているのは、この初代の背中にある3列のギザギザの背びれだともいえるでしょう。
私は2000年代のゴジラは、ほとんど見ていませんが、この年代のゴジラに熱中した人も多いのでは? 左は2001年「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」のゴジラ。なんと目が白目で怖い!右は2003年の「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS」のゴジラの背びれ。すごく長く尖っています。どちらも「畏怖の対象」としてデザイン的にアリだと思います。「大ゴジラ特撮展」で撮影しました。
この背びれは古代に実在した恐竜ステゴザウルスのひれを思わせますが、ステゴザウルスのひれは互い違いに板が並んでいる感じ。ゴジラはおそらくこれをモチーフに3列にしたと思われるのですが、時に光ることもあるこのオリジナリティあふれる背びれは大きな特徴のひとつ。その後、2014年のハリウッド版に至るまでこのデザインは踏襲されています。
意外と小さい? ゴジラと建築物の関係
最後に、ゴジラと建築物の関係を見てみましょう。ゴジラの「身長」は年代ごとに違います。1954~1975年までは50メートルでしたが、1984~1989年に80メートルに、そして1991~1995までは、なんと100メートルまでスケールアップ!
これは私が10年ほど前に「超高層ビル」について書いた雑誌の連載記事です。だいぶ高層ビル事情も変わっていますが、それでも108メートルのゴジラでも147メートルの地上36階の霞が関ビル(1968年竣工の日本発の超高層)よりも低い。東京都庁舎は243メートルなので半分以下。建物を破壊する怪獣のイメージはありませんね。このときは1998年のハリウッド版ゴジラの身長60メートルで比較しました。※クリックで拡大します
これは、建築物が徐々に高くなっていったので、より迫力を出すための設定でしょう。1998年にハリウッドで製作された「GODZILLA」は60メートルにスケールダウン。そして1999から2003年までは原点回帰したのか、55メートルになります。しかし2004に公開された「ゴジラFINAL WARS」では、また100メートルになり、2014年のハリウッド版「GODZILLA」は、108メートルに!
拙著「建築スタイルブック」より。初代ゴジラが国会議事堂を破壊する図版です。これは「食玩」というお菓子のオマケをパチリと撮ったものです。やや強調されていますが、このシーンは有名でゴジラが議事堂の背後から忍び寄り壊すのですが議事堂は65メートルで50メートルのゴジラより低いはず。でも、そんな検証は無粋。国家の象徴的な建造物を破壊したところに意味を感じてしまいますよね。
「50とか100メートルを超える生物なんて、ありえなーい」という科学的な感想もあるでしょう。実際そうした研究本もありました。でも、それはちょっと野暮かな、とも。ゴジラは、SFのモンスター=カイジュウ。純粋に「デザイン」として特撮を楽しむのもアリだと思います。
東宝で大人気だったゴジラに対抗して大映が「ガメラ」という怪獣を1965年に公開して対抗。この写真は平成時代のガメラで完成度の高さから人気です。私は1999年の『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』で渋谷の109(設計:竹山実)や京都駅(設計:原広司)のミニチュアが破壊されるシーンに衝撃を受けました。建築や都市景観の特撮描写はスゴイ!
実際にこんなシーンがあったのか記憶は定かではありませんが夕焼けをバックにゴジラ人形を撮ってみました。スーパーの屋上駐車場で夕刻に怪獣をもってウロウロしているおじさん(私)は通報されてもおかしくないレベルでしたが…。