Facebookが秘密裏に行った実験が議論を呼んでいる
2014年6月17日付けで『米国科学アカデミー紀要』という学術雑誌に、ある論文が掲載され、議論を呼んでいます。Adam D. I. Kramera, Jamie E. Guillory, and Jeffrey T. Hancock (2014) Experimental evidence of massive-scale emotional contagion through social networks. Proc Nati Acad Sci USA 111(24):8788-8790.
タイトルは「ソーシャルネットワークを通じた大規模情動感染に関する実験的根拠」。著者はFacebook社のデータサイエンスチームのアダム・クレイマー氏とカーネル大学の研究者ら3人。情動感染と呼ばれる心理現象について、Facebook上で行った実験結果を報告しています。しかしこの実験が、Facebookユーザーに無断で行われていたとして、実験プロセスが問題視されています。
SNSにおける情動感染を検証した実験
問題となっている実験とは、どのようなものだったのでしょうか。テーマである情動感染(または感情伝染)とは、人の感情や気持ちが他人に伝わる心理用語です。笑顔を見ると自分も幸せな気分になる、逆に怒っている人を見るとこちらもイライラしてくる、といったことは、みなさんも経験があるでしょう。そのような心理の変化が情動感染です。
Facebookではポジティブな投稿(いわゆるリア充投稿)が多く、自分もポジティブな内容を投稿しがちです。これを統計学的に評価したのが今回の論文です
実験は、英語版のFacebookを訪問するユーザー68万9003人を対象に、2012年1月に1週間行われました。ニュースフィードで友達の投稿を表示するアルゴニズム(計算方法)を変更し、ポジティブワードが含まれる投稿が表示される回数を少なくしました。ただし表示されないのはニュースフィードのみであり、友達のページ(タイムライン)にいけば表示するようにしています。
次ページ:実験結果はどうだったのか。ユーザーへの事前説明に問題はなかったのか。