マネジメント/マネジメント事例

日本サッカー協会が後任監督選びの前にすべきこと(2ページ目)

日本代表チームの後任監督人事が早くも取り沙汰されていますが、後任監督選出を含め日本サッカー協会が今取るべき組織運営のあり方を、同協会を企業組織として置き換えることでマネジメントの立場から解説してみたいと思います。

大関 暁夫

執筆者:大関 暁夫

組織マネジメントガイド

 

協会は後任監督人事よりも前に新たなビジョンを示せ

まず報道などから現状を見てみると、まっ先に協会が動き出したのはザッケローニ氏の後任監督選びであるようです。言ってみれば現場の責任者人事。ブラジル大会が0勝に終わったという残念な結果からすれば、経営責任を全面的に負うべき常任理事会(取締役会に相当)は、人事よりも先にやるべきことがあると考えるのが、組織マネジメントからの常識的な判断になります。しかし現時点ではその部分の動きが見えません。

解説

サッカー協会は後任監督人事優先でいいのか

取締役会の最も大切な役割は、経営方針の策定です。この観点から今回のサッカーワールドカップの事後処理を考えるならば、まず常務理事会は日本代表チームの敗因を含めた大会検証をしっかりとおこない、めざすサッカーがこれまで通りでいいのか、それとも今回の反省を踏まえて新たな路線をめざすべきなのか、しっかりと議論する必要があるでしょう。

言ってみれば、組織の経営責任すら問われかねないほど大打撃をうけた今回のような事態では、経営方針の見直しから検証をおこなうのがマネジメントの常識です。その上で次の大会に向け、日本代表がめざすサッカーはいかなるものになるのか、新たなビジョンづくりとも言える部分を固めないことには、執行部隊である日本代表チームの選手一人ひとりが共有すべき「次大会に向けた日本代表チームのサッカー」というものの姿が全く見えてこないのです。

今日本サッカー協会がまっ先にやるべきことは、代表執行役のザッケローニ元監督の後任選びではなく、今回の惨敗を糧にしたチームの新たな方針づくりではないかということ。経営と執行の分離によって経営が現場から独立性を保っているのならなおさらです。現場の失敗を受けた経営はその検証をもとに新たな経営方針を固め、はじめてその方針に適合した監督を指名することができるのではないかと思うのです。

このように組織マネジメントの観点から見てくると、「ワールドカップ日本惨敗→ザッケローニ辞任→新監督獲得」へ、という報道が伝える流れは、日本サッカー協会のあるべき動きとして大切なものが抜け落ちていると言わざるを得ません。

まずは、日本サッカーが進むべき方向とビジョンを明確にしていただき、それを受け晴れて指名された新監督指導の下、次大会に向けた日本代表チームの大躍進に期待したいところです。
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