絵本/絵本関連情報

食べることがもっと楽しくなる絵本『おいしいおと』

ごはんやおかずを食べる時に、どんな音が聞こえますか!? 絵本『おいしいおと』の中では、温かいタッチで描かれたおいしそうなごはんやおかずたちが、バラエティに富んだ意表を突く音とともに食べられていきます。「食べたい」という気持ちを大いに刺激する絵本です。

執筆者:千葉 美奈子

おいしそうなごはんと『おいしいおと』がたくさん!

毎日の食事、皆さんはどんなおかずが好きですか? ごはんやおかずを食べる時に、どんな音が聞こえますか!? 食欲を大きく左右するのは、視覚と嗅覚と味覚。そして、食べている時に「おいしいなあ」という気持ちを一層引き立ててくれるのが、食感であり、「食べる音」。絵本『おいしいおと』の中では、温かいタッチで描かれたおいしそうなごはんやおかずたちが、バラエティに富んだ意表をつく音とともに食べられていきます。「食べたい」という気持ちを大いに刺激する絵本です。

 

「美味しさ」を作っているのは、味だけじゃない!

『おいしいおと』の表紙をめくると、ごはんとわかめのお味噌汁、彩り豊かなたくさんのおかずが食卓に並んでいます。おかずは、春巻き、ウィンナー、サラダ、かぼちゃの煮つけ、ほうれん草のお浸し……。さあ、どれから食べようかな!?

「いただきまーす」の声とともに、パリッと揚がった春巻きを食べたらどんな音がするでしょう。絵本に書かれている音は「カコッ ホッ カル カル カル カル カル」。「春巻きを食べる時にする音はこんな音だっけ!?」と思い、繰り返して読んでみます。そうすると、パリッとした皮の歯応え、温かい具が口の中で現れた時の食感、野菜たっぷりの具をかむ音などが、実際に食べている時のようにリアルさをもって聞こえてきます。

私は特に、お味噌汁のわかめを食べる時の音の表現が大好きです。「ピララルッ リョリュ リョリュ リョリュ リョリュ」。なんと巧みにわかめの姿を表しているのでしょうか。箸でつまみ上げたわかめのツヤと透明感、ぬめりやしっかりとした食感が鮮やかに描き出され、磯の香りまでが漂ってきそうです。

ほうれん草やごはんはどんな音がするかな? ページをめくるたびに意表をつく音の描写に驚きつつ、その音がそれぞれの食べ物の特徴を見事に表していることに驚かされます。


五感をフル活用して味わおう

これは「音をたてて食べる」ということとは少し違うのです。「五感をフル活用して、食べ物の姿や、香り、口当たり、歯応え、温度などをゆっくり味わって食べてね」と、絵本の中の美味しそうな食べ物たちが語りかけているようです。じっくり味わって食べると、食べ物の様々な特徴に気づくことができます。そうすると、「パクパク」「モグモグ」「ムシャムシャ」だけではないバラエティに富んだ音で、「食べる音」を表現することができるのですね。

とても個性的な音なので、文字を追うだけではスラスラと読めない絵本です。読む時にも五感をフル回転させて、実際に食べたり飲んだりするつもりで読んでみましょう。そして時には書かれている音にとらわれすぎず、「自分たちにはこんな音に聞こえる!」という音で、親子でアレンジして読んでみても楽しいですね!
 
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