7月開幕の注目!公演
『ジーヴス』7月4~13日=日生劇場←観劇レポートup!
『ブリング・イット・オン』7月9~27日=東急シアターオーブ←観劇レポートup!
『ひめゆり』7月17~22日=シアター1010←観劇レポートup!
『EMPIRE』7月18日~9月15日=品川プリンスホテルClub eX←観劇レポートup!
『ジョン万次郎の夢』7月19日~8月17日=四季劇場「秋」、その後京都、全国巡演←観劇レポートup!
7月公開の注目!映画
『マイ・リトル・ヒーロー』7月12日よりシネマート六本木、シネマート心斎橋ほかにて順次上映
8月開幕の注目!公演
『ヴァンパイア~愛と憎しみの果て~』8月10~27日=Bunkamuraオーチャードホール←観劇レポートUP!
『唄のある風景』8月20~24日=木馬亭←観劇レポートUP!
『ショーガール』8月21日~9月14日=パルコ劇場←観劇レポートUP!
『VAMP ~魔性のダンサー ローラ・モンテス~』8月24日~9月8日=EX THEATER ROPPONGI←観劇レポートUP!
『赤毛のアン』8月31日~9月28日=自由劇場←観劇レポートUP!
AllAboutミュージカルで特集(予定)の公演
『ブラック メリーポピンズ』7月5~20日 Star Talkにて、出演・一路真輝さんへのインタビュー&観劇レポートを掲載!
『ミス・サイゴン』7月25日~8月26日 Star Talkにて、出演・原田優一さんへのインタビューを掲載!
『タイトル・オブ・ショウ』8月1~11日 Star Talkにて、出演・浦井健治さんへのインタビューを掲載!
『ONE- HEART MUSICAL FESTIVAL 2014夏』8月16~27日 Star Talkにて、出演・大和悠河さんへのインタビューを掲載!
Pick of the Month 『ジーヴス』
7月4~13日=日生劇場『ジーヴス』
アンドリュー・ロイド=ウェバーの75年の作品(96年に『By Jeeves』のタイトルで改訂)として知られながら、なかなか日本で上演される機会のなかった『ジーヴス』が、満を持して登場することになりました。物語の舞台は、英国のとある教会。貴族のバーティーがチャリティイベントでバンジョーを弾こうとしたところ、肝心のバンジョーが無い! どうしようと執事のジーヴスに泣きつくと、即興劇を演じたらということになります。かくして、バーティーが友人たちの恋を取り持つ顛末が、教会のスタッフをも巻き込んで描かれることに。彼らは果たして無事演じおおせることが出来るのか?
上流社会の物語でありつつ、いかにも英国らしい、セリフや事件が畳みかけてくるドタバタ喜劇とあって、日本での上演は難しいかもと思われていた本作ですが、今回はそれをキャスティングで解決。翻弄される主人公役に柔軟性のある二枚目、ウエンツ瑛士さんが扮するいっぽうで、なだぎ武さん、つぶやきシローさん、エハラマサヒロさんといった笑いのプロが参加。そこに右近健一さん、樹里咲穂さん、モト冬樹さんらコメディセンスに定評のある実力派俳優が加わり、さらには「どんな時でも頼れる」天才執事ジーヴスを里見浩太朗さんが演じることで、ぐっと重厚感が増す模様です。『ジーヴス』は英国人なら誰でも知っているといわれる超・有名小説。ロイド=ウェバー・ファン、英国ファンはもちろん、ミュージカルファンならぜひともおさえておくべき公演となりそうです。
【稽古場見学会レポート】
6月22日にオーディエンスも交えて行われた稽古場見学会。はじめに演出家の田尾下哲さんから「ジーヴスはどんな時でも頼りになるキャラクターで、日本で例えるならドラえもん」というわかりやすい解説があり、続いて劇中劇という設定ゆえの、手作り感溢れる小道具や、訳あって次々壊れてゆくセットの仕掛けを一部紹介。観客の興味が高まったところで、ウエンツさん演じるバーティーと、なだぎさん演じるアメリカの食品会社の御曹司が出会うシーンが披露されました。フランクなアメリカ人らしく、ハイタッチを求める御曹司に対して、バーティーはその手をさらに上から持ち、英国人貴族らしく挨拶。フレンドリー過ぎるアメリカ人とそれに当惑する英国人のギャップが、サービス精神旺盛ななだぎさん、ウエンツさんのアドリブに彩られながら描かれ、場内には笑い声が響きました。披露の後には高橋愛さん、樹里咲穂さんも挨拶に加わり、高橋さんは「英国のコメディを日本のお客様に楽しんでもらえるよう、皆で相談しながら稽古しています」とコメント。英国喜劇がうまく日本の笑いに翻訳されている様子がうかがえ、本番への期待がいや増すひとときとなりました。
『天才執事 ジーヴス』撮影:渡部孝弘
劇中劇として再現されるエピソードは、バーティが友人たちの恋の成就のために奔走し、巻き起こったてんやわんや。これだけ献身的な働きをしたのであれば強烈に覚えているでしょうに、このバーティ、けっこう記憶が曖昧で再現しながら「あれ?ジーヴス、こうだったっけ?」と何度も確認しています。この台詞を聞いて筆者が思い出したのが、以前、某・英国上流階級の方とやりとりをしていて、「送るよ」と言われたものがいっこうに届かなかったこと。ミドルクラスの方に話したところ、「貴族って忘れっぽいのよ」と説明しながらフォローしてくれたのでした。
『天才執事 ジーヴス』撮影:渡部孝弘
『ブリング・イット・オン』
7月9~27日=東急シアターオーブ『ブリング・イット・オン』Photo:Katsuyoshi Tanaka
これまでありそうでなかった、アメリカ発祥の華やかな文化「チアリーディング」を題材としたミュージカル。2000年の同名映画に想を得て『アヴェニューQ』のジェフ・ウィッティが脚本を、『イン・ザ・ハイツ』のリン・マニュエル・ミランダや『ネクスト・トゥ・ノーマル』のトム・キットらが音楽を担当しました。チアリーディングの全米選手権を目指して努力する少女たちの青春を生き生きと描き出し、ブロードウェイでは2012年に上演、トニー賞作品賞にノミネート。ミュージカル俳優はもちろん、全米トップクラスのチアリーディング選手たちも多数出演し、人間ピラミッドをはじめとする難易度の高い技が次々繰り出されるのも見どころ。暑さを吹き飛ばす、爽快かつ華々しい舞台に出会えそうです。
『ブリング・イット・オン』撮影:阿部章仁
チアリーディングに情熱を傾けていたヒロインがとある「陰謀」により、悪名高い「不良校」に転校。はじめはのけ者にされるものの、そのひたむきさで少しずつ生徒たちに溶け込み、ついにチアリーディング部を創設して全米大会を目指す……。ヒップホップとロックを巧みにブレンドした音楽に導かれ、ダイナミックなチアリーディング演技もふんだんに織り込みながら、物語は「人生で本当に大切なことは何か」を知ってゆく高校生たちの、きらめくような日々を描き出します。
『ブリング・イット・オン』撮影:阿部章仁
『ひめゆり』
7月17~22日=シアター1010『ひめゆり』
96年の初演以来上演を重ねている、ミュージカル座の代表作『ひめゆり』。第二次世界大戦末期、ひめゆり学徒隊の名で女子学生たちが従軍看護婦として戦争に駆り出され、その多くが犠牲となってゆく姿を、オリジナル・ナンバー全41曲で描きだします。9演目となる今回の公演には、主人公キミ役で神田沙也加さん、上原婦長役で沼尾みゆきさん、檜山上等兵役で松原剛志さん、滝軍曹役で阿部裕さんらが出演。死と隣り合わせになりながらも懸命に生きた少女たちの姿を通して、戦争の残酷さ、平和の尊さ、そしてかけがえのない生命を、改めて胸に刻む舞台となりそうです。
【観劇ミニ・レポート】
初演以来、再演の度に手を入れ続けているということで、「無くてもいいかも」という要素は一切無く、最後まで緊迫感が持続。よく練りあげられた作品であるばかりでなく、出演者、とりわけ女学生たちの渾身の演技が大きく貢献している舞台です。布(座内での通称は「換気布」)を手に、軍人を揶揄する「鬼軍曹」などでの一糸乱れぬ群舞、息の合った透明感あるコーラス。戦争を語り伝える責任を意識し、真摯な姿勢で取り組んでこその成果でしょう。
『ひめゆり』写真提供:ミュージカル座
『EMPIRE』
上演中~9月15日=品川プリンスホテルClub eX『EMPIRE』セクシーな衣裳でアクロバットを見せる「ゴリラ・ガールズ」の3人組。
ジャンルとしては「シルク」、つまりサーカスを中心としたエンタテインメント・ショーですが、ミュージカルファンにも見逃せない要素があるためご紹介します。2006年にNYで始動したカンパニー「スピーゲルワールド」が第二弾として発表した本作では、青山円形劇場より近い?というほどこぢんまりとした円形シアターで、「大人のためのシルク」を展開。注目したいのが、サーカス・アクトと共演し、時にソロで歌う歌手のミス・パープル役です。演じるヴィクトリア・マットロックさんは、『ウィキッド』北米ツアーで主役エルファバを演じていたミュージカル女優。大劇場でエルファバを歌っていた俳優の発声を、間近で聴く絶好のチャンス!見逃せません。
『EMPIRE』ミス・パープル役のヴィクトリア・マットロックさん。
水先案内人はオスカー&ファニーの夫婦コンビ。ニューヨーカーのイメージが一新されるほどエッチで、おバカで、突き抜けた2人のお笑いが差し挟まれながら、わずか直径3メートルの舞台に次々とパフォーマーが登場します。ミラーボールのように回転し続ける透明球の中でバランス技を見せたり、「失敗したらこちらに飛んでくる?!」とはらはらさせながら、ローラーコースターの男がパートナーを抱きかかえ、超高速でスピンしたり。スリリングな技の連続で楽しませると、最後は一本の羽に無数の枝を足してゆくという原始的な、けれど非常な集中力を要するバランス技で哲学的な空間を創りだし、クライマックスに。様々な意味で「大人」なショーはあっという間にフィナーレとなります。このクライマックスでヒーリング・ミュージック風にスキャットを聴かせたかと思えば、ロック、ポップスを歌う場面では押しの強い幅広の声(業界用語ではベルティング・ヴォイス)で観客を引き込むのが、ミス・パープル役のヴィクトリアさん。その変化ぶりは小気味よく、彼女の起用が、ショーに「ただものでない」感を付け加えています。
*次ページ以降で『ジョン万次郎の夢』、映画『マイ・リトル・ヒーロー』、8月開幕の『ヴァンパイア』『唄のある風景』『ショーガール』『VAMP』『赤毛のアン』をご紹介しています*