イタリア/ナポリ

ナポリの守護聖人サン・ジェンナーロと観光スポット

ナポリの町を、あらゆる災害から守るといわれる聖人サン・ジェンナーロ。いったいどんな人物で、サン・ジェンナーロ祭りとはなにか? 彼にまつわるナポリ市内の観光スポットにはどんなところがあるのか? まとめて紹介。

河村 英和

執筆者:河村 英和

イタリアガイド

ナポリの守護聖人サン・ジェンナーロとは誰か?

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枢機卿クレシェンツォ・セーペによるナポリ大聖堂でのサン・ジェンナーロの血の融解の儀式(FlickrよりPaolo Magni撮影)


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ホセ・デ・リベーラ《窯から無傷ででてくるサン・ジェンナーロ》(1646年、ナポリ大聖堂内サン・ジェンナーロの礼拝堂の右祭壇画部分)

サン・ジェンナーロ(San Gennnaro)は、ナポリの町をヴェスヴィオ火山の噴火、地震やペストなど、あらゆる災害から守ると言われている聖人です。紀元後3世紀に実在した人物で、日本ではラテン語名で、聖ヤヌアリウスとも呼ばれています。サン・ジェンナーロはナポリっ子にとって、歴史上の人物を超え、伝説と相まった特別で大切な存在です。その証拠に、ナポリ人男性にとても多い名前は、この聖人と同名のジェンナーロです。サン・ジェンナーロはべネヴェントに生まれ、ナポリで司教の座につきました。キリスト教を弾圧するディオクレティアヌス帝に迫害されるも、奇蹟が起こり、窯から無傷で出てきたり、ナポリ近郊の町ポッツオーリの闘技場での猛獣に食われる刑では、ライオンが猫のようにおとなしくなってしまったりで、最後には斬首刑で絶命させられました。

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聖人札に描かれたサン・ジェンナーロ、背後には噴火中のヴェスヴィオ火山が

サン・ジェンナーロの命日に因み、毎年9月19日はサン・ジェンナーロの日で、ナポリはお祭りです。祝日となりますので、市内の学校や公共機関は休み、ナポリで最も重要な教会である大聖堂(Duomo)では、とても有名な儀式が執り行われます。この大聖堂には、サン・ジェンナーロの凝固した血液が、取っ手のついた丸いガラスケースに保管されていて、その日は大司教がそれを取り出し、ゆっくりと回転させながら振りはじめます。やがて固まっていた血が溶け出し、集まった市民たちは、今年もナポリは安泰と、サン・ジェンナーロの血の融解の奇蹟に感謝し、血の入った容器にキスをする人が続出します。

そんなサン・ジェンナーロにまつわるナポリ市内の観光スポットには、いったいどんなところがあるのでしょうか。

大聖堂内のサン・ジェンナーロの礼拝堂と付属博物館

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ナポリ大聖堂内のサン・ジェンナーロの礼拝堂の主祭壇、中央のブロンズ像と左手前の着衣の銀製像はサン・ジェンナーロ (c)Ewa Kawamura

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コジモ・ファンザーゴによるサン・ジェンナーロの礼拝堂の真鍮門とサン・ジェンナーロの胸像 (c)Ewa Kawamura

さきに述べた血の融解の奇跡の儀式の舞台が、この大聖堂(ドゥオーモ)です。大聖堂の建立は、13世紀に遡り、内部は様々な時代の装飾が入り交じり、正面ファサードは、19世紀後半の正面道路の建設に伴って作り直したものです。大聖堂の中に入り、身廊の右手にはナポリのサン・ジェンナーロ信仰の中心となる「サン・ジェンナーロの礼拝堂」があります。ナポリのバロック美術の粋を尽くした内装で、その入り口にある真鍮門は、17世紀ナポリ・バロック建築の中心人物で、彫刻家でもあるコジモ・ファンザーゴの作。中央上部にはサン・ジェンナーロの胸像が置かれています。礼拝堂内部には、中央のドーム天井がジョヴァンニ・ランフランコが描く《天国》、礼拝堂の右手の祭壇画は、ホセ・デ・リベーラの《窯から無傷ででてくるサン・ジェンナーロ》など、有名画家の作品が目白押しです。

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カルロ・スキサーノによるナポリの町を災害から守る聖イレーネ像(銀製、1733年、サン・ジェンナーロ宝物館所蔵) (c)Ewa Kawamura

一方、大聖堂の正面玄関右手には、「サン・ジェンナーロの宝物館」もあり、銀製の聖人像の数々、ナポリ派バロック絵画のコレクションのほか、大聖堂の聖具室(sagrestia)への入場がここからできます。

<DATA>
■Duomo/Reale cappella del tesoro di San Gennaro(大聖堂内のサン・ジェンナーロの礼拝堂)
見学時間:8:30~13:30と14:30~20:00(月~土、ただし日曜の午後は16:30分~19:30)
住所: Via Duomo, 147, 80138 Napoli
TEL:+39 081 449065

Museo del Tesoro del San Gennaro(サン・ジェンナーロの宝物館)
見学時間:9:00~17:00(水曜を除く毎日営業)
料金:5ユーロ
住所: Via Duomo, 149, 80138 Napoli
TEL:+39 081 294980

サン・ジェンナーロのカタコンベ(地下墓地)

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サン・ジェンナーロのカタコンベの内部 (c)Ewa Kawamura


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サン・ジェンナーロのカタコンベ内にある初期キリスト教時代の墓の壁に描かれたフレスコ画 (c)Ewa Kawamura

カタコンベとは、初期キリスト教時代の地下墓地のことで、町の城壁外に設けられていました。「サン・ジェンナーロのカタコンベ」も、旧市街の中心から離れて、カポディモンテの丘へ至る坂道の途中にある「戴冠聖母の大聖堂(Basilica dell'Incoronata Madre del Buon Consiglio)」の裏手(チケット売り場は、この大聖堂の左手)にあります。ナポリ特有の黄色い凝灰岩トゥーフォを掘ってつくられた洞窟状のカタコンベには、随所に紀元後2世紀ごろから数世紀にわたって描かれたフレスコ画が残っています。

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5世紀に描かれたサン・ジェンナーロの最古の肖像画 (c)Ewa Kawamura

サン・ジェンナーロの遺体が、このカタコンベに埋葬されたのは、死後から一世紀ほど後の4世紀。しかし831年に生誕地のべネヴェントへ移してしまったので、今ここに残っているのは、遺体のないサン・ジェンナーロの墓穴跡と、5世紀にフレスコで描かれた最古の肖像画です。見学後は、入場した地点(丘側)に戻っても、旧市街のサニタ地区へ徒歩で行ける出口(丘の下)へ抜けても、どちらでも可能です。

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城壁外のサン・ジェンナーロ大聖堂 (c)Ewa Kawamura

その出口は、「貧民のためのサン・ジェンナーロ病院(Ospedale di San Gennaro dei Poveri)」の敷地と隣接していて、ゴシック期の建築である「城壁外のサン・ジェンナーロ大聖堂(Basilica di San Gennaro fuori le mura)」に通じています。ただしサニタ地区は、貧しい住宅街のある危険エリアなので、細心の注意が必要ですが、同チケットで入場できるもう一つのカタコンベ(Catacombe di San Gaudioso)への、徒歩でのアクセスに便利です。

<DATA>
Catacombe di San Gennaro(サン・ジェンナーロのカタコンベ)
見学時間:10:00~17:00(月~土)、10:00~13:00(日、祝)、毎時間おきに出るガイドツアーにての見学
料金:8ユーロ(サン・ガウディオーゾのカタコンベの入場券込み)
住所:Via Capodimonte, 13, 80136 Napoli
TEL:+39 081 744 3714

次のページでは、ナポリのバロック時代を飾ったサン・ジェンナーロ関連モニュメント3件と、現代アーティストのサン・ジェンナーロ作品がみれるホテルを紹介します。
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