1つのわらべ歌から広がる遊びの世界、わらべうたえほん
『まて まて まて』ほか
簡単なフレーズに覚えやすい単純な抑揚で、子どもたちが大好きなわらべ歌。こばやしえみこさんの案にましまえつこさんによる絵のシリーズ「わらべうたえほん」から、『まて まて まて』『ととけっこう よがあけた』『せんべ せんべ やけた』の3冊をご紹介します。素朴なわらべ歌から広がる、日常生活の中のささやかな遊びの魅力が詰まった、赤ちゃんにもおすすめの絵本です。ハイハイが始まった赤ちゃんの喜びがいっぱい! 『まて まて まて』
ハイハイで前進できるようになり、両腕を突っ張って、前方を真剣に見つめながら進んでいく赤ちゃん。その時「まて まて まて」の声に赤ちゃんが振り向くと、うさぎさんが追いかけてくるところでした。うさぎさんだけではありません。色々な動物たちが次々に「まて まて まて」と言いながら追いかけてきます。追いかけられる方も、追いかける方も、それはそれは楽しそうです! 自分で移動できるようになった赤ちゃんにとって、こんな風に遊びながら追いかけられることは、この上ない喜びでしょうね。次はどんな動物が出てくるかな? 最後に赤ちゃんのまねをして、床に手を付きながら追いかけてきたのは? 「まて まて まて」、たったこれだけのフレーズも、読み手それぞれが自由に抑揚をつけて楽しめるのがわらべ歌なのです。
こんなわらべ歌で起こされたら目覚めもすっきり!?
『ととけっこう よがあけた』
朝が来たけれどまだ目覚めない子には、「朝だよ」の代わりにこんなわらべ歌を。「ととけっこう よがあけた ○○ちゃん おきてきな」。絵本では、早起きのニワトリのお母さんが、色々な動物にこの歌を歌いながら、優しく起こしてまわります。最後に声をかけられた男の子も、すっきりとした表情で起きてニワトリさんにごあいさつ。朝をどんな気分でスタートするかは、その1日を大きく左右するもの。忙しい朝だからこそ、こんなわらべ歌に助けを借りるのも楽しいですね。
ままごと遊びに『せんべ せんべ やけた』
「せんべ せんべ やけた」というわらべ歌遊びは、数人で輪になってする遊びです。みんなで両手を出し、1人がみんなの手を順番に指さしていきながら歌う中で、「このせんべやけた」の時に当たった子はその手を裏返します。2回当たったら焼き上がりで、両手を引っ込めます。誰が一番早く、焼き上がるでしょうか? 当たりそうで当たらない、そのワクワクドキドキ感に、子どもたちは何度も何度もくり返しこの歌を口ずさむことでしょう。絵本の中では、女の子が千代紙の貼られた箱を火鉢に見立てて焼き網を置き、『せんべ せんべ やけた どの せんべ やけた この せんべ やけた』などと歌いながら、おせんべいやおにぎり、お団子などに見立てたものを焼く仕草をし、家にいる動物や人形、お母さんに「はいどうぞ」と振る舞っていきます。1歳前後の「どうぞ」「ありがとう」のやりとりからどんどん発展していくままごと遊びは、赤ちゃんから小学校に入る前後まで、長い期間、子どもたちが大好きな遊びですね。小さな子どもと「おいしくなあれ、おいしくなあれ」と声をかけながら料理をする仕草をし、「一緒に食べよう。おいしいね」と子どもと一緒に味わうまねをすると、本当に美味しい気分になってくるのも、ままごと遊びの楽しさの1つです。
どの絵本も単純な繰り返しの展開なので、0~2歳前後のお子さんにおすすめです。決まったメロディーがあるわけではないのがわらべ歌ですが、巻末に簡単な楽譜がついているのも嬉しいですね。1つのわらべ歌から自由自在に広がる世界を、絵本を通して届けてくれるシリーズ「わらべうたえほん」。小さな子どもたちがどうしてこんなにもわらべ歌は好きなのかを、読み手の大人にも体感させてくれることでしょう。