小さな歓びを何度も繰り返し1600km先のゴールへ
実際、「なんでイタリアまできてこんなに切羽詰まって走っているんだろう?」と思ったことは何度もあった。シエナのカンポ広場まで来て、一杯のコーヒーすら飲まず通過してしまうなんて??けれども、そんな弱気をすぐに打ち消してくれる強力な援軍が、つねに身の回りにあった。沿道の観衆による声援だ。フレンドリーで元気なイタリア人が、このときばかりは輪をかけてフレンドリーで元気になる。バールのおっさんから村のシスターまで、老若男女、町中が、参加者たちを精一杯の声援で迎え、送る。それまでシカメ面で飛ばしていたエントラントたちも、出迎えの笑顔に導かれて最高の笑顔になり、疲れも吹っ飛んで……。
結局は、その繰り返しなのだ。小さな歓びを何度も繰り返した結果、1600km先のゴールへとたどり着く。そして、ゴールする頃には、一緒に走ってきた仲間たちとの、何ともいえない連帯感が生まれていて……。そんな仲間と一緒に乾杯した、ゴールした直後のビールとフランチャコルタ(イタリアの誇るスパークリングワイン)の旨かったことといったら!
走っているときは、こんなツラいこともう二度とやるもんか、と思っていた。ゴールした瞬間から、来年出るにはどうしたらいいのか考えている自分がいた。ひたすら走り、コンマ何秒を競い、沿道の観衆に手を振り続けたミッレミリアには、オトナを虜にする魔力があった。
日本でも、今、クラシックカーイベントが盛んだ。特にミッレミリアの縮小版のようなイベントが日本全国で開催されている。日本版ミッレミリアのラフェスタだってある。クラシックカー相場が高騰する今、手頃なモデルを買って楽しむのは逆にいいチャンスである。買って乗って楽しんで、手放すときには高値で売れる、なんてことも大いにありえるのだから……。
まずは、高くなくてもいいから、古いクルマを手に入れてみようじゃないか。古いクルマを手に入れれば、同好の仲間と知り合えて、輪が広がる。気軽なイベントに参加したり、日帰りのラリーイベントに出てみたり。ゆっくり自分のペースで楽しむ。一生の趣味が、そこから始まることだろう……。