BMW328ロードスターで“憧れの舞台”に
ミッレミリア。クルマ好きなら一度は耳にしたことがあるはずだ。1000Migliaと記された緑地に赤い矢印のステッカーを目にしたことだってあるだろう。けれども、それがいったい何であるのかを正確に知っている方は、(一般的にいって)かなりのクラシックカーマニアだろう。ひとことでいうとそれは、クラシックカーをドライブするマニアにとっての“憧れの舞台”、である。
単なるギャザリングやミーティングではなく、今日本でも流行のラリー形式のイベントだ。ミッレミリアとはイタリア語で千マイル(ミッレ=1000、ミリア=マイル)=1600kmの意味。要するに、1600km走ることに由来したイベント名というわけ。
その昔、1927年から57年まで(戦中の中断あり)は、公道を使ったタイムレースだった。いかに短い時間でゴールするか、単純明快に競われていた。ところが、57年に観客を巻き込んだ大事故が発生。翌年以降、数々の伝説を生んできた過酷な公道レースはいったん幕を閉じたのだが……。
20年後の1977年。こんどはラリー形式のイベントとなって、伝説のレースは帰ってきた。出場できるのは当時の参加車両もしくは同型車のみ(のちに同年代のクルマのみに緩和)というヴィンテージ・クラシックカーのビッグイベントとして復活したのだ。
最大の魅力は、半世紀以上も前に作られた何百台もの名車たちが、4日(実質3日)間をかけて、風光明媚な北イタリアの大地を1600kmも駆けぬけること、に尽きる。スタート時間とゴール時間が定められており、途中に設けられた競技(区間タイムの正確さや平均速度の正確さを競う)やスタンプチェックをこなしながら、コマ図を頼りにひたすらゴールを目指すのだ。
縁あって、ボクは2014年のミッレミリアに、BMWクラシックから出場することになった。パートナーは元BMW会長で中興の祖と呼ばれたエーバーハート・フォン・クーンハイムの子息で現在BMWのアジアマーケット責任者であるヘンドリック・フォン・クーンハイム氏。マシンは1938年型のBMW328ロードスターで、当時2リッタークラスで世界最強と呼ばれた名車である。