いじめ防止で一番大切なことは「いじめない子」をつくること
「いじめなどという卑怯なことは絶対にしない」と自主的に思える子を一人でも多く作ることが大切
「いじめはいけない」「いじめは卑怯なことだ」ということを繰り返し子供に伝えることもある程度の効果はありますが、できれば子供たちが自分で「いじめなんてしたくない」と思えるといじめはなくなります。人は「しなければならない」-must-ではなく「したい」-want-という気持ちでこそ、自主的に行動します。子供自身が、「いじめない人になりたい」と思わなければ、大人の目の届かないところでいじめを行ってしまいます。
そのためには、いじめ問題に"いじめる子""いじめられる子"そして"傍観者"として子どもたちが巻き込まれたときに「いじめはいけない」と思えるような、一歩踏みとどまる心の支えが子供達には必要です。ではどうすればその心の支えは養われるのでしょうか。
自己のアイデンティティに対する「誇り教育」が大切
子供に誇りを持たせ積極的に人のためになる価値観を育てることが大切
そこでは、現実にいじめ解決に力を入れている学校の生徒からの新入生に対するメッセージを見る機会もありました。驚いたのは「人の役に立つ人になろう」と言葉がそれぞれの学年の生徒のコメントにあったことです。自尊心というと、この年齢では「自分に自信を持つ」等のベクトルが自分に向いていることが多いものですが、この学校の生徒は他人を利する方向に向いていたのです。これが一人ではなく、ほとんどの生徒に浸透していました。これではいじめは発生しないでしょうし、発生したとしても自浄作用が働くのもうなづけました。
また日本の歴史上、とても立派なことをした人物の事例紹介もされていました。現在、道徳教育の中で「日本の偉人教育」に文科省も取り組もうとしておりますが、それよりももっと身近な自己のアイデンティティに対する「誇り教育」として、私は家庭版歴史教育をおすすめします。
家庭の歴史を伝えて「誇り」を持たせる
家庭版歴史教育のススメ
例えば、代々勉強ができることで社会の役に立っている家庭であるとか、品位ある家庭で地域の役にたってきたとか、商家として成功したとか、お祖父さんが亡くなってから、女手一つで家を守って家族の面倒をみたとか、なんでもいいのです。先祖がいて、この家にも歴史があって、その歴史の中に自分が存在するというようなことを子供の心の中に育てる教育です。
単なる「褒める子育て」で育てる自尊心と異なるのは「貢献」「利他」の観点があるところです。多くの人の存在の中で自分は生かされているという感覚から、報恩、貢献という考え方を育てるのです。
学校での歴史教育は、どちらかというと国や社会にためにこれだけ努力をした歴史があったという内容よりも、事実を列挙し、それに対する問題点を掘り下げたりとマイナスの部分を教える内容が多かったと思います。大人になってからは、真実の探求という点で、プラスもマイナスも冷静に学ぶことは大切だと思います。二度と過ちを繰り返さないように、考えることは必要だからです。しかし、子供のうちは子供の中に自尊心を育てる、自分に自信を持って「自分はやればできる」「自分は悪いこと、卑怯なことをするような人間ではない」「多くの人の存在の中で自分が存在している」と理解させ、信じ込ませる教育が必要です。
苦労話は、美談として伝えるとよいでしょう。親や祖父母の恥ずかしい過去もあるかもしれませんが、後で子供が成長してから実態がわかってしまったとしても、たいしたことはありません。素直なうちに、自分にまつわる自信を植え付けておいたほうがよいのです。