疑惑の闇トレード
ガイド:約1年ぶりのインタヴューですね。前回は、一つの区切りとしてのベスト・アルバム『恋と革命とアーバンギャルド』とミュージックフェア出演のお話を中心にお訊きました。アーバンギャルドから発信されるテレパシーのようなものを感じていて、次は大きな変動があるのではと予想していたんですが、やはり来ましたね! 先ずは、ユニバーサルから徳間ジャパンコミュニケーションズに電撃移籍。Perfumeの移籍を逆行するパターンで、これまたアーバンギャルドらしいなと(笑)。いや、別に意識してそうなった訳ではないでしょうが。
祝ミュージックフェア初出演! アーバンギャルドBEST (All Aboutテクノポップ)
浜崎容子(以下、浜崎):
先生お久しぶりです。完全な新作としては約一年半の時間が空きました。
松永天馬(以下、松永):
アーバンギャルドとPerfumeはレーベル間でトレードされました!…というのは冗談ですが、レーベルも新たに心機一転することになりました。前作のベストに新録された『都会のアリス』はいわばアーバンギャルドの「これまでのあらすじ」のような曲だったので、今回は完全に新たな一歩を踏み込んだかたちですね。前作からの変化といえば僕も30代になり、色々な経験(どんな?)を経ての移籍リリースと相成りました。
的を得た誤変換
ガイド:色々な経験…今度密かに教えてください(笑)。
いい事は溜め込まずにすんなりと言ってしまいますが、新作『鬱くしい国』、とっても気に入ってしまいました。音源をもらってから、インタヴューを仕上げるために(笑)、このアルバムをアジアをウロウロしながら聴いていたのですが、中国の雲南省の西双版納やタイのバンコクでコスプレの若者たちを見かけたのです。彼らは日本をどのように捉えているだろうと思いつつ、そういう風景に妙に『鬱くしい国』は馴染んでいました。「美しい国」を「鬱くしい国」と変換してしまう、奥ゆかしさ(?)も好きです。
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松永:
かつて60年代にロック・カルチャーが世界的なムーブメントを引き起こしたように、今は日本のkawaiiカルチャーが世界を席巻しているように思います。何も音楽に限った話ではないですよね。ロックがそうであったように、ファッションやアート、デザインなどにも影響を及ぼしている。僕らもジャパン・エキスポなど何度かの渡仏公演を経て、そのムーブメントに自覚的になったというか、これはいわば外国人から見た日本を日本人が再解釈したようなアルバムなんです。外国人観光客向けのガイドブックを再翻訳したら「美しい」が「鬱くしい」に誤変換されていた。だけどそれが的を得ていたりする。
浜崎:
ありがとうございます。松永も申しておりますが、二回の海外公演を経験し、我々も今まで以上に「日本」という国を意識するようになりました。日本人なのに日本を意識する、というとちょっと不思議な感覚なのですが。自分たちが「外国人」になる場所でライヴをした時に、アーバンギャルドって「日本らしい」もしくは「東京っぽい」バンドなのだな、と再確認したみたいな。