テクノポップ/アーティストインタヴュー

アーバンギャルドの『鬱くしい国』(2ページ目)

アーバンギャルド、電撃のレーベル移籍後、初アルバムとなる『鬱くしい国』を6月18日にリリース! 既にPV(プロパガンダ・ビデオ)を3作も発表。新境地に踏み込みつつも、我らの国「日本」をアーバン的切り口で見つめた渾身の力作となっています。松永天馬さん、浜崎容子さんに新作について語って頂きました!

四方 宏明

執筆者:四方 宏明

テクノポップガイド

日本人の寛容性

ガイド:
アルバムのジャケは、会田誠さんによる作品「群娘図’97」の一部を使用とあります。会田誠作品との出会いを教えてください。

松永:
90年代の終わりに村上隆や草間彌生、奈良美智といった現代美術のポップな作家が一気に注目され、いっぽうでアラーキーなど別の文脈とされていた作家が現代美術に組み込まれる動きがあったと思うのですが、そこで僕もサブカル者の嗜みとして(笑)当然の如くアートを貪っていた時期がありまして。なかでも当時一番のお気に入りは会田さんでした。少女文化やkawaii文化と一定の距離を保ちながらそれを批評して背後にある「日本」を浮き上がらせる手法はアーバンと近いスタンスがあると考えています。アイロニーだけど愛、というか。

ガイド:
2012年に森美術館で行われた個展「会田誠展: 天才でごめんなさい」の一部の展示に対しては、市民団体や一部識者の批判を受けました。特に、「欧米の美術館では決して許されない」などの欧米基準の論調を読んで、非常に違和感を持ちました。以前のインタヴューでお話しをした『少女は二度死ぬ』のジャケを手がけたトレヴァー・ブラウンさんの話を思い出しました。たとえ欧米で問題視されようと、トレヴァー・ブラウン(そして会田誠)が受けいれられる国としての日本を誇るべきではないかと。

松永:
江戸時代の一般市民の文化度が当時の世界都市においても最高水準のレベルであったということはよく聞きますが、日本がいまだ世界に誇れるのは文化度、具体的にいうと文化に対する緻密さと寛容度の高さだと思います。変態性欲をアートまで昇華できる国、といったら言い過ぎかもしれませんが、何にでもアートの要素を加えられる。何でも擬人化するし、何にでも萌えられる。想像力というか、妄想力が逞しすぎるんですよ!

浜崎:
よく日常会話でも「外国だったら通用しない」などのワードが出てくると思うのですが、ここは日本ですよ、と思う事私にも多々あります。考え方は人それぞれ違っても構わないのですが、国単位だと色んな基準値が違って当たり前なので…日本の文化として日本人の目線・感覚で話すことに自信を持って良いと思います。

ガイド:
同感です。僕たちに外国人に対して日本をちゃんと説明する能力と努力は必要ですが、日本を自己否定する必要はないと考えます。

おもちゃ箱をひっくり返したようなサウンド

ガイド:
では、楽曲の方の話をしましょう。アルバム全体としては、毒を持ちつつも、今までのアーバン以上に明るい、ポップ、振り切った感があります。また、4人のメンバーがそれぞれ作曲し、音楽性も幅広くなっていますね。やはり、この辺りは一度リセットして、新たなアーバンに挑戦しようとした結果でしょうか?

浜崎:
リセット、とは思いませんでした。しかし「アーバンにとって新しい」と感じるものを作りたい、と言う気持ちが強くありました。メンバーが4人になり、制作を始める前は不安な部分もありましたが、それが杞憂だったことがすぐに分かりました。アーバンを始めてから頭の中にずっとあった「おもちゃ箱をひっくり返したようなサウンド」を形にすることが出来た気がしています。それと同時に、どんな形でもどんな曲でも、アーバンギャルドはアーバンギャルドだな、と思える作品だな、と。毎回このような事は話しているかもしれませんが、作品を作る度に再確認させてもらえるのです。

松永:
urbangarde

左から: 鍵山喬一、浜崎容子、松永天馬、瀬々信

アーバンギャルドもなんだかんだ6枚目のアルバム。メンバー同士、音楽的な部分での役割分担が出来るようになってきた気がします。ここは君を信用するけど、ここは僕を信じてね、みたいな。いっぽうで杉山圭一氏(ケラ&ザ・シンセサイザーズ)を初めとしたサポートメンバーによって外部の血が導入され、初期衝動を取り戻せたところもありますね。

 

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