”再始動”を問われる次のシングル
それともうひとつ、今のAKB48が抱えている問題があります。それは新規ファンの獲得です。AKB48としての活動は8年を越え、前田敦子に次いで大島優子と初期からのファンを牽引してきた2大スターが引退した大転換期である2014年。しかし、大島優子が安心して引退させられる状況を作れたかというと疑問が残ります。どんなエンターテイメントやスポーツでも重要な「世代交代」。大島引退2日前の渡辺麻友第1位でギリギリ果たせたようにも見えますが、話はそう簡単ではないでしょう。AKB48としては『ヘビーローテーション』以来の、ファンでなくても「なんとなく口ずさめる」「なんとなく知ってる」くらいの、文字通り国民的ヒットである『恋するフォーチュンクッキー』を飛ばした昨年ですが、それにしては”新規ファンが増えた”感が薄くないでしょうか? またAKB48全体より彼女個人のファンが多かったと言われる大島優子の引退も大きい。さらにここまでリリース毎に売り上げ記録を伸ばしていた各グループのシングルも伸び率の鈍さが目立つように。これはAKB48グループの求心力低下というだけでなく、CDセールス全体の鈍化の影響もあります。
握手会に足繁く通う濃いファンに支えられているAKB48とはいえ、新規ファンの増加なくしては将来もない。ソウルディスコ調の『恋チュン』のヒットもあってか、今年のシングルは青春パンク調の『前しか向かねえ』、シルヴィ・バルタンの『あなたのとりこ』をオマージュしたようなフレンチポップス調の『ラブラドール・レトリバー』と、この2作でいわゆる「王道のAKB48曲」を封印していることも、楽曲から新規層を取り込むべく意識してるのかもしれません。
これまでの総選挙投票シングル『ポニーテールとシュシュ』『Everyday、カチューシャ』『真夏のSounds good !』『さよならクロール』と比較しても、今回の総選挙シングル『ラブラドール・レトリバー』は異質です。アイドルとしては王道ポップスですが、AKB48の王道とはちょっと違います。
最後に、第1位から陥落した指原莉乃への今後の期待についても。この1年、「AKB48の顔」と「HKT48の顔」両方を努めてきた彼女。しかし今回の結果を受けて「HKT48の指原」を中心に動けるようになることは、グループ全体の活性化にも繋がるでしょう。実際、今回の総選挙で13人がランクイン(その内7人が初ランクイン)と48グループ内でのずば抜けた勢いを見せつけたHKT48。この春東名阪アリーナツアーを成功させ、夏には地元福岡で2万人級の野外ライブと、他グループに比べてもその勢いは圧倒的。HKT48で指原が描く理想のアイドル世界は、これからの渡辺AKB48にとって最大のライバルとなるはず。また良くも悪くもバラエティ番組での顔が重視される日本のテレビ界において、指原のタレント力を渡辺が越えるのは容易ではない。“渡辺AKB48対指原HKT48”という構図がAKB48グループ全体の空気を盛り上げてくれるのではないでしょうか。
もちろん今回の総選挙でも非選抜メンバーを次々ランクインさせファンの濃さでは随一なところを見せたSKE48、今回であらためて総選挙との独自の距離を表明したような結果のNMB48も脇役では終わりません。まずは各グループの夏のシングルに注目です!