目も当てられない給食模様で始まる『給食番長』

わんぱく小学校1年2組の給食模様は、目も当てられない状況です。取っ組み合いをする子たち、そのはずみでこぼれる給食、好物のシチューを「オイラによこせー!」と叫ぶ「給食番長」が持ったお皿から飛び出すシチュー……。入学以来、まだ一度も給食をちゃんと食べていないそんなクラスの様子に、肩を寄せて涙を流す人たちがいました。

個性的な絵で繰り広げられる、普通ではありえない物語の展開。しかし、その強烈な個性を持った子どもたちと給食のおばちゃんたちが、体当たりで心と心を向き合わせ、子どもたちが何かを感じていく様子に、幼児から小学生まで引き込まれてしまうようです。


 

 

 

子どもたちと給食のおばちゃんたちの体当たりの物語

給食の時間に暴れる子どもたちの隅っこで、なすすべもない様子の担任の先生。子どもたちの様子に腹を立てて1年2組に乗り込んで争ってしまう給食のおばちゃんたち。おばちゃんたちは思いが伝わらないために絶望し、ついに「家出」の書置きを残して給食作りの仕事をボイコットしてしまいます……。困った子どもたちは給食室に入り込んで、なんと自分たちで激しい給食作りを展開し始めます。給食番長は神業のような包丁さばきで野菜を刻み、仲間たちに指示を出し、612人分の給食が作り上げられていきます。ありえません! 他の大人たちは何をしているのでしょう?

この絵本ではあえて、他の大人たちは口を出すことなく、子どもたちと給食のおばちゃんたちのみの心のぶつかり合いで、お話が展開されているようです。他の大人がどんなに言い聞かせても、給食を作る側の思いを感じることができなければ、このはちゃめちゃな子どもたちは変わることはないからかもしれませんね。


給食を全部食べられない子だっている。でも……。

1年生だと、給食を全部食べられない子も少なくないでしょう。どうしても苦手なものや、体質的に食べられないものがある子もいます。牛乳を頑張って飲んだら、それだけでおなかがいっぱいになってしまう子もいるかもしれません。「全部食べる」ことだけが必ずしも一番大切なことではないでしょう。

でも、毎日家でご飯を作ってくれる家族と同じように、「おいしく食べてもらいたい」「元気に大きくなるために必要な食べ物を届けたい」と、子どもたちのことを思いながらその日の給食を作り、大量の後片付け作業を黙々とする給食のおばちゃんたちの心に触れることができたら……。1人1人の食べ方は、自分のできる範囲で少しずつ変えていくことができるはずです。自分たちが必死で作った給食があまりにも不評であることに衝撃を受け、後片付けにも疲労困憊した給食番長とその仲間たち、そして1年2組のみんなには何か変化が起こり、もう給食室にはいないおばちゃんたちに会いたくなったようです。

この絵本を読んだ我が家の小1男子が、ラストページで、「この子どもたちは給食を全部食べるようになったのかな?」とつぶやきました。さあ、どうでしょう。実際には単純なこともないかもしれませんね。でも、少なくとも1年2組の子どもたちは、きちんと並べられた机の上の配膳された給食を前に、みんなで声をそろえて「いっただっきまーす!」と叫びました。食事を食べる時の基本に気付いたことは、大切なスタート地点になったことでしょう。



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