雨の日ならではの発見『あめのひはいいてんき』
小さな子どもがいる生活の中では特に、お天気に毎日が左右されるもの。晴ればかりでは自然のバランスがよくないことは分かっていても、雨が降ると行動が制限されてしまいます。外遊びもできないし、湿った室内で心もどんより。保育園や幼稚園の送り迎えも大変。室内干しの洗濯物もなかなか乾かない!日常生活に影響を与える雨だけれど、雨がしとしと降る外に長靴を履いて傘をさして踏み出してみたら……。生き生きとした自然の営みが広がっていました。雨の中の風景に、次々と新しい発見をする絵本『あめのひはいいてんき』の中の男の子の様子を見ていると、雨の降る中、少し時間を作って外を歩いてみたい気分になりそうです。
雨の日はあじさいもかたつむりも生き生き
『あめのひはいいてんき』
川崎洋・文、中根のり子・絵
発行所:福音館書店
定価:本体743円+税
元気を増すかたつむり、雨に動じない鯉……
雨の降る中、触角をピンと伸ばして生き生きとした様子のかたつむり。水の中の鯉は、雨などおかまいもせず悠々と泳いでいます。雨に濡れると、土や植物の色も濃さを増します。そんな様子を見ながら、男の子は「あめのひは いいてんきなんだね」と自然に感じます。雨が降り出すと色々なにおいがしてきますよね。濡れたコンクリートのにおい、強さを増す草木のにおい、湿った空気のにおい……。ページをめくるたびに、淡い色使いの生き生きとした動植物の姿が現れ、雨の降り出した後の一帯のにおいまでふんわり伝わってくるようです。
普段自由に飛び回る鳥たちは、どんな様子でしょう? 普段と変わらず子育てのために働く様子もあれば、雨に濡れて元気のない鳥の様子も。帰るおうちは? 大丈夫なのかな? と想像が膨らむ男の子です。
晴れ=よいお天気?
買ってもらったばかりの長靴をはいて傘をさし、雨の中を探索する男の子。どろんこ遊びをする仲間たちを見つけ、傘を放り出してしまいました。強まってきた雨に打たれる植物の様子を見て、このたくさんの雨がどこへ行くのかと思いを巡らせます。じめじめとした雨の日が苦手な私ですが、この絵本を読んでいたら、子どもの頃『あめふり』の童謡が大好きだったことを思い出しました。そして、我が子たちが保育園に通っていた頃、ザーザー降りの雨の中の保育園の送っていく際、子どもたちそれぞれにかっぱを着せて長靴をはかせ、小さな傘を持たせて外に出たら、みんなの嬉しそうな様子に自分も一気に楽しい気分になったことがよみがえってきました。雨って悪くないな……と思ったその時の気持ちが、絵本のタイトル『あめのひはいいてんき』と重なりました。
ほんの少しの時間を作って、雨の中、子どもと家の周りを歩いて見ようかな。この絵本を読むと、きっとそんな気持ちになれるはず。晴れの日だけが「よいお天気」じゃないって、当たり前でありながら大切な発見ですよね。