真骨頂はそのフットワークの素晴らしさ
M4の真骨頂は、もちろん、そのフットワークの素晴らしさにある。高速道路を降り、ポルトガルの山岳地帯を走った。ハンドリングとシャシーのモードセットは、もちろん、スポーツだ。重めのステアリングフィールに固められたアシという街中でのイメージは、走しりこめばこむほどに、変化する。クルマの動きが蕩けて次第に乗り手の身体と馴染んでくるようだ。変速的なコーナーが連続するワインディングロードでも、その動きはきわめてリズミカル。コーナー途中の凸凹でも接地感はまるで失われず、特にリアサスの粘りが、そうとうに頼もしいので、がんがん踏んでいける。
電動パワステのチューニングも申し分のないものだった。とにかく、マグネシウム骨格のステアリングホイールは剛性感もたっぷりで、動きが軽やかであるにも関わらず、リニアリティに優れている。
アルガルヴェのテクニカルサーキットでも試乗したが、とにかく、シャシーはコントローラブルで電子制御のクォリティが“ファン方向”に素晴らしく高い。全くたれないブレーキ(オプションのカーボンセラミック)にもいたく感動した。
パワーフィールは申し分なし、のエンジンも、サウンドだけはやや官能性に欠ける。残念ながら、旧型用自然吸気V8のようには響かない。高回転域でのクリアさも物足りなかった。
3ペダルのMTに乗ると、エンジンのざらっとしたフィールが特に強調されてしまうから、回す楽しみも半減する。もっとも、新開発のマニュアルギアボックスそのものはシフトフィールも素晴らしく、未だ、操る楽しみを十分、提供してくれるものではあるけれど……。
セダンのM3にも、一般道そしてサーキットで試乗した。重量もさほど変わらないし、性能は全く同じだと思っていい。ただ、Aピラーの角度とダッシュボードの高さがそれぞれ違う(ベースモデルの基本的な差でもある)ため、前方視界のイメージが少し異なる。M3の方が街や高速、サーキットでも、ドライブしやすいと思えたが、好みの問題だろう。