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BMW・X3の4WDシステム

X5に続きBMWのSUVとして登場したX3には新しい4WDシステムが採用された。xドライブと呼ばれた新しいシステムはSUVにBMWの妥協なき走りを実現するためのものだった。

執筆者:川島 茂夫



BMW初のSUVとして誕生したX5にはプラネタリーギア式のセンターデフを用いたフルタイム4WDが採用している。プラネタリーギアを用いるのは前後輪のトルク配分を不均等にするため。前輪に38%、後輪に62%のトルク配分として、後輪駆動に近いハンドリングの実現を狙っている。また、このシステムはDSCのブレーキ制御により前後および左右の駆動力配分を自在に制御できるのが特徴である。

ブレーキを用いた駆動力配分制御はデフギアのカウンターギアとしての効果、つまり左右輪デフでは右輪に減速負荷を掛けると左輪にその負荷分が駆動力として加わるというもの。デフを挟んで左右、あるいは前後の車輪の駆動力の合計は一定になるので、片側を減速すれば片側は加速するのだ。

電子制御4WDシステムでは先進的な制御を行っていたが、BMWのSUVに新たなラインナップとして加わったX3ではxドライブと呼ばれる新システムを採用している。ただし、X3のために開発されたのではなく、X5もマイナーチェンジで、この新システムに変更されている。

xドライブは多板クラッチを介して駆動力伝達を行うMP-T(マルチプレートトランスファー)の一種。4WD時の前後輪駆動力配分は多板クラッチ圧力(締結力)により制御。4WD走行でも軽くクラッチを繋いでいる状態では2WDに近い配分となり、完全にクラッチが繋がれば前後同配分になる。

簡単に考えれば従来の4WDシステムのほうが自在に駆動力を制御できて、BMWらしい走りの実現に有利に思える。しかし、駆動システムの変更は、BMWのハンドリングへのこだわり以外の何物でもない。

一般的なMP-Tは通常走行では2WD、滑りやすい路面などで2WDでは十分な駆動力が得られない時、あるいは4WDによる安定性が求められる時に4WDに切り替わる。ところが、xドライブは4WD走行を基本として、2WDが有利な時にFRあるいはそれに近い駆動力配分となる。

具体的にはコーナーへのアプローチや高速走行でFRに近い駆動配分になる。FRの美点である滑らかな回頭性を求めたのは容易に理解できる。高速安定では4WDのほうが有利なのだが、駆動系やタイヤのストレスの軽減や燃費向上の面からFRとして、安定性に関してはDSCでリカバリーするという現実的なメリットを考えた結果と思われる。

ただ、これらのメリットを考えても従来システムを捨てる理由にはならない。xドライブの最も重要なメリットは制御反応のよさてある。従来のDSCによる駆動力配分制御は1/10秒単位だったが、xドライブは多板クラッチの作動にサーボモーターを用いて反応速度を1/1000秒まで向上している。これにより、従来は不可能だったリアルタイムの最適な駆動力配分が可能となった。

1/10秒オーダーでも十分な性能を得られるが、4WDや高重心、重重量の厳しさがハンドリングに出てしまう。もっとBMWらしく走らせるには、さらに制御精度を高めて、細密なコントロールを行う必要がある。結果として行き着いたのがxドライブなのである。

xドライブの採用はサスチューンにも影響を与える。X5は従来システムからxドライブに合わせてサスチューニングを新しくしている。マイナーチェンジ後のX5には未試乗なので評価はできないが、X3と同傾向のセッティングとのこと。従来X5はストロークを締め上げて重心高と重さを抑え込むようなチューンだったが、X3は深く腰のあるストロークにより力を往なすような味付け。他のBMWと同じように唐突な動きを抑えながら、確実に軽やかにラインをトレースしていくのだ。

X3の試乗記は機会を変えてリポートするが、xドライブを採用したX3が次のSUVの走りのベンチマークとなるのは間違いない。SUVの走りの楽しさと質を革新するといっても過言ではない。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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