運命に導かれるように舞台の道へ
――非常にナチュラルで、豊かな語彙の日本語をお話しになりますが、神永さんは韓国のご出身なのですよね。09年に入団される前から日本語の勉強をされていたのですか?
「いえ、来日してからです。来日して初めてひらがな、カタカナ、漢字を学びました。だいぶ掴めてきたような気もしますが、まだまだ勉強が足りませんね。初舞台は『エクウス』の馬役だったのですが、自分に台詞は無くても他の方の台詞に反応しなくてはいけないので、韓国語のできるスタッフに助けてもらいながら、体に入れていくのに苦労した思い出があります」
――お芝居を目指したきっかけは?
『ガンバの大冒険』シジン役。撮影:阿部章仁
――最近は韓国でもミュージカル公演が花盛りですが、なぜ来日を決意されたのですか?
「研修で先輩がたのお話をうかがうなかで、劇団四季には俳優にとって素晴らしいサポート環境があることに魅力を感じました。韓国人の先輩方もたくさん活躍されているし、レパートリーも広いし、勉強できることがたくさんある。それまで海外に行ったことがなかったので、“海外暮らしを体験してみたい”という好奇心もありました」
――研修の最後にオーディションを受けられたのですね。どういう内容だったのですか?
「自由曲2曲を歌うというもので、僕は大学でも勉強していた『ウェストサイド物語』の“マリア”と『オペラ座の怪人』の“ミュージック・オブ・ザ・ナイト”を歌いました。そこで運よく合格できたことで、最終的に決断しました」
――来日されて、多少なりともカルチャーショックを受けながらの役者修業だったかと思います。
「はい、故郷は夜中でも通りで歌を歌っているような賑やかなところでしたが、こちらに来ると稽古場の周りは住宅街で、夕方早くから静まり返っているのには驚きました。レッスンも、もともとダンスはそれほど得意ではなかったので本当に苦労しました。でも、自分の人生です。せっかく自分で選んだ道なのだから、お客様にいい舞台を楽しんでいただけるような俳優にならなければいけない。絶対にあきらめてはいけないんだと思い続けました」
――多くの方が神永さんのお名前をインプットしたのが『ジーザス・クライスト=スーパースター』かと思います。11年にアンサンブルとペテロを演じ、12年にペテロに加え、ジーザスに挑戦。昨年はジーザスを演じられました。
『ジーザス・クライスト=スーパースター』撮影:上原タカシ
――目標にする役者さんはいらっしゃいますか?
『李香蘭』王玉林役。撮影:上原タカシ
――では、役者としての夢をお聞かせ下さい。
「日本で演じている以上、日本語の台詞で感動していただけるよう、日本語をもっともっと体に入れて行きたいです。歌もまだまだ修行が足りません。もっとうまくなりたいです。そのためには……今回の『ソング&ダンス60』で、やはり稽古を重ねること、経験を積むことに尽きると思いました。センスのある人なら、早くコツを掴むのかもしれないけれど、僕はそういうタイプではないので、これまで通り、こつこつ積み上げていけたらと思っています」
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思慮深く、丁寧に語る神永さん。「歌う時は、何でも自分の色に染めるのではなく、その曲その曲の世界を大切に表現したい」という姿は誠実そのものです。これまでは内向的な役柄が多かったそうですが、観客を楽しませる、“笑顔にする”ことが何よりの使命である『ソング&ダンス60』で、新境地を開拓。今後もこつこつと、神永さんのペースで夢に近づいて行くことを願ってやみません。
*公演情報*『劇団四季ソング&ダンス60 感謝の花束』上演中~2014年8月3日=自由劇場
*次ページで神永さんがタイトルロールを務める『ジーザス・クライスト=スーパースター』観劇レポートを掲載!*