直径400ミリと300ミリのローラーによる圧密加工技術
ここからは、少し専門的な内容になるが、まず丸太を製材して角材をつくり、厚突き可能な専用スライサー加工機でスライスして単板をつくる。同社が導入した加工機は、杉などの角材を0.5ミリから14ミリまで連続してスライスすることができる。
圧密工程では、直径400ミリのローラーでしっかり圧密をかけ、次に直径300ミリのローラーで元にもどらないように圧密を固定化する。単板を挟む上下のローラーは、約200度前後に加熱されているが、熱がかかる時間は極めて短ため杉の天然の色は生かせるとのこと。圧密は0.5ミリまでかけられる。
単板の中身に空隙(くうげき)をつくり、接着剤、不燃材、樹脂の含浸(がんしん)加工などができるインサイジング加工もできる。圧密後は同社の従来の方法で接着剤を塗布して重ね合わせ、治具で加工・加熱する成形合板加工を行なう。
この技術開発で2013年2月末に成形合板の圧密化技術と、同技術を使用した家具についての特許出願している。また圧密ロール機については三菱重工側で特許を取得しているとのこと。
針葉樹なので50%の圧密をかけても曲げ強度が2倍になる訳ではなく、設計強度的には1.7~1.8倍とみて、椅子の幅を若干広くしたり、厚くしたりする必要がデザインの注意点として挙げられる。
実際ショールームで展示されている杉材の椅子をみると若干幅広や厚めのディテールに目がいく。
しかし、杉材の真直ぐな美しい木目による色あいの視覚的効果、軽く温かい手触りの触覚的効果、どこか懐かしい香りの嗅覚的効果など、インパクトがあり、新鮮である。
と、同時に「強烈な日本的風合」という既成概念がどうしても拭えないが、今後どのように料理(デザイン)するかが、楽しみである。