プルチネッラってなに!? 誰?
ヴィエートリ陶器の碗皿に描かれたプルチネッラ、背景はナポリ湾と左手にヴェスヴィオ火山、スパゲッティを上から食らいつく(撮影:河村英和)
ユネスコ世界遺産ナポリの「旧市街」を訪れたら、高確率で出会ってしまうのがこの人、プルチネッラ(Pulcinella)です。もしプルチネッラに出会わなければ、本当のナポリを見たとはいえないでしょう。プルチネッラはナポリ人の代表。つまり典型的なナポリっ子の化身です。彼のファッションは、いつも白づくめ。長い布の帽子、だぶだぶの上着、ズボン。全部白ですが仮面だけは黒、決して外さず素顔を見せません。とても気さくで明るく、人懐っこく、冗談でいつもみんなを笑わせてくれ、まさにナポリ人そのものですが、じつは簡単に本心までは見せてくれないのも、またナポリ人なのです。伝説ではプルチネッラは卵から誕生。さらに彼は子だくさんで、10人近くの子供がいますが、かつてナポリの下町の多くの家庭もそうでした。
名の由来は、ナポリ近郊の町アチェッラ(Acerra)に住む農民プッチョ・ダニエッロから転じたものと言われ、そのためアチェッラには、プルチネッラ博物館があります。また演劇史上のプルチネッラといえば、ルネッサンス時代の仮面で行う即興劇、コメディア・デラルテの道化役です。コメディア・デラルテといえばヴェネツィアで盛んですが、ナポリのプルチネッラとは、顔つきが全く異なります。この二つは、むしろ別人と考えてよいくらいです。簡単な見分け方は、黒い仮面の鷲鼻の部分。ナポリのプルチネッラは、あまり長くないのに、ヴェネツィアのは怪物みたいにやたらと長く、先が細くなっているのもあります。さらにヴェネツィアのプルチネッラの襟は、襞がしっかりしていてピエロの襟みたいですが、ナポリのプルチネッラの襟はないこともあり、あってもヨレヨレです。
さらに、ヴェネツィアのプルチネッラの帽子は長い筒形である一方、ナポリのプルチネッラのはヨレヨレ頭巾、上着はボタンがたくさんあるものよりボタンなしが主流、襟首をギャザーで締め、なかに赤いシャツを着ていて、ヴェネツィアのよりも粋(いき)です。
そんな恰好をしたナポリ人の化身プルチネッラは、観光土産として、様々な姿かたちでフィギュア化されています。もちろん、郷土愛の強いナポリの一般家庭やピザ屋・レストランのインテリア小物としてのニーズもあり、プルチネッラはナポリの町の至るところに潜んでます。
ナポリに来たらプルチネッラを探せ!
ナポリの新名所となったアートなプルチネッラ像(撮影:河村英和)
さて一体どこでプルチネッラに会えるのでしょう。運が良ければ、スパッカナポリか王宮付近で、プルチネッラのコスプレをしたおじさんに偶然出くわすかもしれません。しかし最も確実なのは、有名アーティストが手掛けたプルチネッラ像を見にゆくことでしょう。ナポリ生まれの現代アーティスト、レッロ・エスポジトさんが制作・寄付した像で、 2012年11月23日に設置されて以来、ナポリの新名所になりました。 場所は、旧市街、有名ピザ屋も多いトリブナーリ通りに接していて、次ページで紹介するプルチネッラのお店は、すべてその周辺に集中しています。
そういえば、真のナポリピッツァ協会が認めたピザ屋に掲げられる看板にも、プルチネッラが描かれてます。この近辺には加盟店のピザ屋も多かったり、お菓子屋さんの外壁には、ナポリのスイーツ「ババ」にまたがって飛び出したプルチネッラもいたりします。ナポリの旧市街を、プルチネッラ探しをしながら散策するのも、なかなか楽しいですよ。
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■プルチネッラ像
場所:フィーコ・アル・プルガトリオ通り(vico Fico al Purgatorio) が、トリブナーリ通り(via Tribunali)と接する地点。有名なピザ屋「ソルビッロSorbillo」のすぐ近く。
次のページでは、素敵なプルチネッラがどこで買えるのか? プルチネッラ・フィギュアにはどんなタイプがあるのか? などをお伝えします。