西武新宿から10分強、
バス便も多い足回り便利な街
西武新宿と本川越を結ぶ西武新宿線はどの駅もコンパクトで、急行停車駅でも静かな雰囲気が特徴。その中で駅周辺に5つの商店街を擁し、活気のある街が野方(中野区)です。環状七号線と立体交差で直交しており、環七を走る複数のバス路線が利用できる、バス便も便利な街でもあります。
もともとは畑と雑木林が広がる農村地帯だった野方に鉄道が通ったのは昭和2年。その後、少しずつ商店ができ始め、市場、銭湯、カフェなどが点在するようになったそうですが、大きく変わったのは終戦後。周辺が被災する中、野方は無傷で残ったのです。このチャンスを活かそうと商人たちは関東一円から直接商品を買い集めに走り、その品揃えの良さが評判を集めます。最盛期には野方に買い物に来るため、定期券や回数券を用意する人もいたとか。商店街の中には映画館が2館もあったそうです。
しかし、それを一変させたのは東京オリンピックに合わせて開通した環状七号線。この道路を作るため、長年の馴染み客の多くが立ち退きを余儀なくされ、また、道路周辺の人たちも住環境の悪化に転出していきます。同時に周辺駅にも商店街ができたこともあり、野方の商店街は徐々に衰退してきたと、古くからこの街を知る人はいいます。それでも初めてこの街に降りた人は賑やかさに驚くはずです。
個人商店中心、
ひとり暮らし、働く人にうれしい商店街
実際に歩いてみると、この街の商店街にはいくつかの特徴があります。ひとつは大手資本のチェーン店も増えてきてはいるものの、まだまだ個人資本の小さな店が多いということ。食品、飲食店であれば、自分の店で作り、売るという、少し前だったら当たり前だったやり方を続けている店が多いのです。店内で作っているのですから、工場で作るよりは添加物は入れないでしょうし、安くも作れる。外食の多い単身者、働く人にはうれしいことだろうと思います。
価格が安いのは食品、飲食店だけではないようで、おおよそのモノは安い。これはかつて多くの店が集まり、安くて良いものを売らなければ競争に勝ち残れないという経験があったからでしょう。特に目立ったのは八百屋さん。中には手作りのジャムなどを置いている店もあり、今も価格や創意工夫で売ろうとしている意識を感じました。店舗で言えば、八百屋さんの他、和菓子屋さんも目につきました。
多いといえば、ラーメン屋さんも野方を有名にした店舗のひとつ。昭和の時代から環状七号線沿いに店舗が増え、現在は商店街の中にも何店か。気取りのない実質本意な野方らしい食べ物といえるでしょう。
線路を挟んで南北は仕方ありませんが、それ以外の商店街は横道でつながっており、あちこちを見て回って買うというやり方がしやすいのも特徴のひとつ。それも繁栄につながった要因なのでしょう。
一方ですでに開店休業の店や確実に時代に遅れを取っている店などもあり、今後の新陳代謝に期待をしたいところ。実際、かつての野方からすると、新しい雰囲気の店なども生まれてきているようで、変化は始まっているのかもしれません。
続いて住宅街の様子を価格とともに見ていきましょう。