行政書士試験/行政書士のキャリア・開業

資格取得後の独立体験記 第28回 無料相談の道(2ページ目)

法律家による無料相談の広告などを目にする機会が増えました。私も、開業以来、無料相談を実施してきましたが、紆余曲折がありました。今回は、開業者のほとんどが実施を悩む無料相談について、経験からお話をしたいと思います。

山本 直哉

執筆者:山本 直哉

行政書士ガイド


無料にこだわる人間は絶対に依頼しない

ただ、「無料相談から依頼につながる可能性」というものを、当時、私は信じていまいした。しかし、結論から言えば、無料相談が依頼に結びついたかというと、ほとんど結びつきませんでした。

どこまでも値切り倒す、際限なく値切るという人間がいます。同じように、どこまでも無料で頼ろうとする人がいます。そのような人間が依頼者になることはありません。お金を払う気が全くないからです。

ひどい人になると申請書類の書き方を全部聞いてくる人がいます。それを無料相談で行ったら、行政書士は不要になります。そもそも、電話による相談内容だけでは事実関係が把握できず、書類作成はできません。事実関係を裏付ける書類の提出などがあってはじめて作成ができるのです。

無料相談を依頼につなげるには、相談者が常識人でないと難しいと思います。無料だけにこだわる人を相手にすると、結果的に時間の無駄になると思います。仮に依頼にまで発展しても、いざ支払いの段となると渋ったり、値引き交渉を始めるなどろくなことがありません。

それでも無料相談をするならば

弁護士や司法書士などは無料相談を実施している事務所があります。こういった事務所の中には、無料相談の内容などを完全にマニュアル化して、専門の事務員を雇い、事務員に対応させて、顧客になる人間とそうでない人間を振り分けているようです。

このように無料相談を依頼へつなげるように完全マニュアル化するのであれば、無料相談も依頼へとつながると思います。

ただし、そのためには、まず無料相談だけに特化した事務員を雇わないといけません。そして、もちろんですが、その経費を上回る仕事を受注しなければいけません。

しかし、行政書士事務所は一人事務所が圧倒的に多く、仕事の単価も安いのが特徴です。このような点から考えると、組織的な無料相談を行って利益の出る業種は、相続手続きぐらいではないでしょうか。

最後に

このように私は無料相談については否定的です。ただし、開業して3年目くらいから、ずっと行っている無料相談があります。モラハラの無料相談です。

これは比較的新しい問題であるモラハラというものに関心があることと、学問的にも興味があるという、個人的な理由によります。相談内容を論文などで使用させて頂きますとの断り書きも入れています。ですから、ちょっと普通の無料相談とは異なります。

もし新人行政書士が無料相談を実施するならば、目的を持ってすること、期間を限定することなど、様々な限定を加えることが必要だと思います。

なお、消極的に無料相談をすすめる理由になってしまいますが、情報に対して依頼者がお金を払おうとしないか、無料相談から正式な依頼へと結びつけることがいかに難しいかを痛感してもらうためには、無料相談もいいかもしれません。

無料相談をすると、持っている知識や情報をお金にかえることがいかに難しいかを知ることができるでしょう。
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