いまJ-REITが買われている理由
目下、J-REITが買われている理由としては、国内長期金利の低下が挙げられます。長期金利の指標となる10年国債利回りは、5月16日時点で0.580%まで低下しました。これに対して、J-REIT全体の平均分配金利回りは3.65%前後で、両者の間には3%超の金利差があります。3%の金利差は、「価格変動リスクを負ってもJ-REITに投資した方が有利」という機関投資家の判断につながり、その投資行動を喚起します。つまり、3%の金利差がある限り、J-REITは底堅い値動きを続ける可能性が高いのです。
こうした全体マーケットの堅調さと共に、昨今注目を集めているのが、ヘルスケアREITの上場可能性です。ヘルスケアREITとは、有料老人ホームや病院などを組み入れて運用するREITのことです。すでに一部のJ-REITには、ヘルスケア関連施設が組み入れられていますが、今、注目を集めているのは、ヘルスケア関連施設のみを組み入れて運用する「ヘルスケア特化型REIT」です。
ヘルスケア関連施設を組み入れて運用するメリットですが、たとえば現在、J-REITの投資対象で中核を占めているオフィスビル、商業施設、物流施設、ホテル、レジデンスなど他の不動産に比べて、キャッシュフローが安定する可能性があります。オフィスビルの場合、景気が悪くなると、リストラでテナントが出ていったり、あるいは賃料が値下げされたりして、キャッシュフローが悪化する恐れがありますが、基本的にヘルスケア施設の場合、入居者の方々にとっては住居ですから、景気が悪くなったからといって即出ていくことはできません。結果的に、安定したキャッシュフローが期待できます。
もちろん、逆に景気が良くなったからといって、キャッシュフローが急激に改善することはありません。この点から、ヘルスケア特化型REITは、高収益型ではないものの、キャッシュフローが安定したタイプのJ-REITになると考えられます。
すでに私募形式で運用されているヘルスケア特化型REITはあるので、そう遠くないうちに、上場REITとしてお目見えするかと思いますが、先日参加した、ヘルスケアREITに関連したセミナーのパネルディスカッションでは、J-REITを組成するファンド側と、ヘルスケア施設の事業運営を担うオペレーター側との間で、明確な温度差が感じられました。それはディスクロージャーに対する意識の違い、あるいはファンドというスキームそのものに対する不信感のようなもので、これをどう今後、クリアしていくかが、ヘルスケアREIT上場の行方にかかっています。