虹色の雨が奏でる音をきく『あめ ぽぽぽ』

雨でお外に行けない時におすすめの絵本『あめ ぽぽぽ』

「今日は雨模様」というだけで憂うつな気分になってしまう方も多いことでしょう。お子さんは外へ出られずイライラしお部屋も散らかりがちで、お母さん方のため息が聞こえてきそうです。そんな時には、ストレスの原因である雨そのものを楽しんでしまう絵本はいかがでしょう。読後は雨音が心地よく感じられて、窓から眺める景色も輝いて見えるから不思議です。

雨の足跡を見たことがありますか？

雨の日は外へ遊びに行かれないけれど、その分ゆっくり絵本が読めるというメリットもあります。それを活かし『あめ ぽぽぽ』はお子さんをお膝に抱いて、いつもよりゆっくりと絵を見て言葉を楽しみながら読んでいただきたいと思います。

まずは表紙をじっくり眺めてみましょう。雨の日のうっとうしさを吹き飛ばすような鮮やかな黄色と水色が目に入ります。これだけでも気持ちが晴れやかになるような気がしますが、もう少し細かいところに目を向けると……雨粒の色が一粒一粒違っていますね。おまけに傘の端から今にも落ちそうなしずくには、可愛らしい顔が描かれているではありませんか。

この絵を手がけたのはスターバックスのテレビCMなども手掛けるイラストレーター・きうちたつろうさんです。きうちさんの目に映る雨はこんな風に愛らしく楽しいものなのでしょうか？ 表紙だけでなくページをめくるたびに「雨ってきれいだなあ」と素直に思わせてくれる絵が並びます。お子さんと一緒に、小さな雨粒のひとつひとつの美しさを絵本の中に見つけていくのは本当に楽しいものです。

また文章を書いたのは、歌人であり小説家でもある東直子さんです。まるで詩のような言葉とその独特の観察眼で、読者が気付かない雨の日の美しさ・楽しさをすくい上げています。

例えばみなさんは、雨の足跡を見たことがありますか？ 東さんは公園でその足跡を見つけ「おすなばに　あめが　あしあと　つけてるよ」と幼子のような瑞々しい言葉で表現しています。雨音を表わすオノマトペ（擬音語）も楽しく、親子一緒に声を出して読むうちに文章をすっかり覚えてしまうお子さんも少なくありません。

このような理由から、『あめ ぽぽぽ』は いつもよりゆっくりとお子さんと絵を眺め言葉を楽しみながら読むことをおすすめしました。そんなゆったりとした時間の中から、選び抜かれた言葉と楽しい絵が作り出す豊かな絵本の世界を通して、虹色の雨が奏でる音が聞こえてくるように思います。


【書籍DATA】
ひがしなおこ：作　きうちたつろう：絵
価格：864円
出版社：くもん出版
推奨年齢：4歳くらいから
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