ようこそ”夢叶わぬ場所へ”の意味
(撮影:荒井健)
――『35 ステップス』(青山劇場・1988年)から劇団四季の同スタイルの作品を拝見していますが、『アプローズ』と『コーラスライン』の場面はショービジネスに関わる人間の普遍的なナンバーだと今回改めて心打たれました。
達郎
『アプローズ』の「ようこそ劇場へ」や『コーラスライン』の「愛した日々に悔いはない」は歌っていてもより心が入りやすく、舞台に立つ人間の1人として実感を持ちやすいナンバーです。「ようこそ劇場へ」は稽古場の様子を表現した歌ですし、今回の演出では俳優がバーレッスンをする場面で歌われていて、より自分達の心情を明確に見せていると思います。
――その中の歌詞 ”ようこそ 夢叶わぬ場所へ”という一節、凄くシビアですよね。
達郎
色々な捉え方があると思うのですが、”夢叶わぬ場所”=夢が砕け散る場所、ではなく、ショービジネスで高みを目指したらキリがない……いつまでも完結する事がない無限の挑戦を表した曲だと思っています。俳優は「よし、これで完成!」って思った時点で成長が止まってしまいますから。
――そんな厳しい思いを胸に、お二人は四季の舞台に立っている。
『壁抜け男』(飯田洋輔)(撮影:荒井健)
僕が劇団四季に入りたいと思ったのは『キャッツ』を観た事がきっかけだったんですが、高校生の時に観劇して衝撃を受けた『壁抜け男』のデュティユルを演じさせて頂いた時は身が引き締まる思いでした。四季劇場[秋]に続いて、前回公演は今回の『ソング&ダンス…』と同じ自由劇場で演じさせて頂きましたが、この劇場は本当に濃密な空間で、少しでも嘘があるとそれがすぐお客様に伝わってしまう。演じ手の全てが試される劇場の1つだと思います。
達郎
僕は兄の出演作を客席で観て後から入団しました。『オペラ座の怪人』でラウル子爵を初めて演じさせて頂く時に、汐留の電通四季劇場[海]で、開場前に兄の舞台を観た時と同じ席番の客席に座って舞台を眺めながら、「ああ、あの時ここから観ていた作品に今から出演するんだなあ。」と、とても不思議でありがたい気持ちになった事を良く思い出しますね。
『オペラ座の怪人』(飯田達郎)(撮影:堀勝志古)
――本作でお二人はヴォーカルパートとしてご出演なさっていますが、お互いが担当するナンバーで特に気になる場面はどこでしょう?
達郎
それはもう「スーパースター」です!僕は元々ポップスやロックテイストの曲を歌っていたので、あのナンバーを聞くとテンションが上がります。いや本当にカッコ良い!
洋輔
えっと……何でしょう……やっぱり「部長」(『夢から醒めた夢』)ですね。弟が歌うあのシーン、特に好きなんです。兄弟とはいえ、お互い得意分野もキャラクターも全く違いますので、歌うナンバーのカラーも全然違います。今回ヴォーカルパートは男女3人づつで担当しているのですが、個々の個性に合った曲が上手に振り分けられていると思います。
(撮影:荒井健)