「わざわざすみません」という敬語表現が気になるのはなぜ?
意外と幅広い「わざわざ」の意味
ところが、「わざわざお手紙(お電話)いただきまして」のような言い方はなんだか気になるという人もあるようです。 これはなぜなのでしょうか?
「わざわざ」とは、「何かのついでではなく、そのことだけのために、また必要もないのに、特に意図的に行う」といった意味を持ちます。ですから、「わざわざ雨の中を」「わざわざお手紙(お電話)いただきまして」でも正しいということになります。
しかし、「わざわざ来てみたのに休みだった」などのように使うこともあります。そのことだけのために手間をかけるという点で、こちらの表現は少々面倒な感じが加わってきます。ほかにも「ご丁寧にもわざわざご忠告とは」などのように、嫌味や皮肉をこめて言う場合もあります。
「わざわざ」とはこのように、正反対であったり、さまざまな意味で使われることがわかります。受け取り方の個人差や、もちろん言い方の違いなどにも左右されることですが、同じ「わざわざ」を使っても以下のような言い方には注意すべきでしょう。
気になる、気を付けたい言い回しと言い換え例を見てみましょう。
1:わざわざお越しいただかなくともよろしかったのに、すみませんね
■言い換え例「お忙しいところ、わざわざお越しいただいてしまって恐れ入ります」
どちらも間違いではありませんし、親しい間柄ならば「忙しいのに、わざわざごめんね」などと言うこともあるでしょう。
しかし、例文のように、「わざわざ……なくてもよろしかったのに」となりますと、なんだか「来なくてもいい、必要ないのに」という部分だけが強調されてしまう感じがあります。
「お忙しいところ」「……いただき」「恐れ入ります」などの言葉が加わることで、忙しいなかを自分のためにという恐縮な気持ちや感謝の思いが強まるのではないでしょうか。
2:わざわざ届けていただかなくても、送っていただければ……
■言い換え例「わざわざお届けくださいましてありがとうございます。郵送でとお伝えすればよかったものを、ご面倒をおかけいたしました。実は来週あたり使う予定があったものですから、助かりました」
こちらも1に同じく、「わざわざ……なくてもいいのに」という、煩わしい感じが残ります。
「ありがとうございます」のお礼の言葉や「伝えそびれてご面倒をおかけして」というおわびの言葉、そして「……だったもので助かりました」などの表現が加わることで、相手の気遣いへのお礼の気持ちが込められてくるでしょう。
3:わざわざお誘いいただきましたが、伺えず申し訳ありません
■言い換え例
「せっかくのお誘いを予定が入ってしまって、お伺いできませんで申し訳ございません」
いかがでしょうか。例文も言い換え例も意味は一緒ですが、同じ「わざわざ」でも、お礼やおわびの言葉を省略せずにひと言加えたり、似た言葉の「せっかく」などに場合によっては言い換えることで、なんとなく言葉の印象も違ってくることがあります。
とらえ方の違いや言い回しによってもニュアンスが違ってくる「わざわざ」ですが、その意味を理解して場面に応じてうまく使い分けたいものですね。
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