自由自在のハンドリング。オススメはZ51
試乗車は、スポーツカーマニアには絶対オススメしたい、Z51パッケージのAT仕様だった。V8エンジンをドライサンプ化し、ノーマルの機械式LSDにかえて電気式デフを採用。マグネティックライド装備した45mmモノチューブショック(ノーマル=35mm)をおごり、大口径ブレーキローターとインチアップタイヤ&ホイール(鋳造→鍛造)を履く。カーボン柄もものものしいエアロデバイスで武装したうえに、日本仕様ではメガホンのようなスポーツエグゾーストシステムも加わって、とりあえず、最新コルベットにおける最強仕様と言っていい。まずは、ライドモードをツアーに設定して走り出す。ノーマル仕様よりもはっきりとアシを固めてはいるものの、嫌みな突き上げなどは皆無で、ノーマル仕様とはまた別種の、快適なライドフィールである。この段階で、ボディが旧型に比べてがぜん引き締まっているのも分かるし、アクセルペダルひと踏みで隣のM君に“速い!”と言わせることもできたが、コーストラインのクルージングくらいでは、C7の、特にZ51パッケージの持ち味を十分に知ることなど不可能だ。
ワインディングロードに入って、最強のトラックモードを選んだ途端、車体のキャラクターが劇的に変化した。
ドライサンプエンジンがいきなり悪態をつくようにわめき声を上げはじめ、それに呼応してステアリングフィールはがっちりと強固になり、足回りのしなやかさもさっと消え失せた。クルマが戦闘モードに入ったのだ。
車体のサイズがひと回りもふた回りも小さくなったように感じられ、そのぶん、ドライバーは自在に操れるという気分になる。実際、そのステアリングフィールは、自由自在という表現がぴったり。さらに、巨大な“ラッパ”形状のエグゾーストシステムからは、アメリカンマッスルそのもののビッグサウンドが弾き出されて……。
たとえば最新の欧州スポーツカー、ジャガーFタイプあたりよりもソリッドで強力なスポーツカー、という印象である。
アメリカの技術力をみくびってはいけない。蘇った“スティングレイ”は、そう雄叫びを上げたのだった。