テクノポップ/海外のテクノポップ

東ベルリンを訪ねて

共産テクノ連載を続けます。今年の3月に東ベルリンを訪れました。ドイツに於ける懐古的共産趣味と言えるオスタルギーを体感するためです。オストロックにテクノポップ・ニューウェイヴはいたのか? 若かりしニナ・ハーゲンから東ドイツを代表するKaratまで。

四方 宏明

執筆者:四方 宏明

テクノポップガイド

ドイツ民主共和国

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ドイツ民主共和国の国旗

「共産テクノ」シリーズ、ソ連を中心に話をしてきましたが、ここで東ドイツに目を向けましょう。東ドイツは通称で、ドイツ民主共和国。ドイツ語では略称DDR(Deutsche Demokratische Republik)、英語ならGDR(German Democratic Republic)となります。東ドイツに限った事ではありませんが、実質的一党独裁(建前は複数政党制)の共産主義国家が名は体を表さず“民主”を国名に入れているのは、皮肉な現象です。第二次世界大戦後の1949年にソ連が占領した地域が東ドイツとなり、米国・英国・フランスが占領した地域が西ドイツ(ドイツ連邦共和国)となりましたが、中でもベルリンは地域的には東ドイツに入るものの、都市が西と東に分断され、1961年にベルリンの壁が築かれました。そして、1989年にベルリンの壁は崩壊し、1990年に実質上東ドイツが西ドイツに吸収される形で、東西ドイツは統一されました。

 

オステル・ホステル

表題にもありますが、今年の3月にベルリンを訪れました。滞在したのは、旧東ベルリン地区のベルリン東駅(Berlin Ostbahnhof)から近いオステル・ホステル(Ostel - Das DDR-Design-Hostel)に宿泊しました。


 
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ベルリン―東ドイツをたどる旅

ここは、見市知著『ベルリン―東ドイツをたどる旅』という書籍で知りました。ベルリンのガイド本は数ありますが、あくまでも東ドイツにこだわる潔さが好きです。著者自身が東ドイツ時代に東ベルリンに住んでいただけあり、ガイド本でありつつ、読み物として楽しめます。この本の表紙にもなっているのが、オステル・ホテルです。この辺り、ベルリン中心部と比べると風景が違います。東ドイツ然としたパネル建築物がならび、このホテルもその一角を利用したものです。近くには、ベルリンの壁を野外アートギャラリーとしたイーストサイド・ギャラリーへも歩いて行け、中心部への交通も便利です。

ベルリン―東ドイツをたどる旅 (私のとっておき) (amazon.co.jp)
Ostel

 

オスタルギーとは?

ostel

オステル・ホステル室内

このホテルのテーマは、オスタルギー (Ostalgie)。Ost(東)とNostalgie(郷愁)を合わせた合成語です。東ドイツの生活空間が再現されています。トイレ・バスは別部屋にあったり、部屋には豪華さはありませんが、ホーネッカー議長の写真が飾ってあるレトロキッチュな気分が味わえます。前回、「共産趣味」について書きましたが、ドイツに於ける懐古的な共産趣味の一種としてよいでしょう。イデオロギー的意味をもつ東ドイツ体制への回帰を望むものとは捉えていません。ただ、全ての東ドイツ的なものを否定するべきではないという(政治的ではなく)文化的プライドを感じます。東ドイツそのものに郷愁はないはずの日本人の僕ですから、旧東ドイツの人々の複雑な心情を理解することは難しいです。しかし、彼らがその体制の中でどのような暮らしぶりをしていたか、どんな物を使っていたかという事には純粋に興味がわきます。

オスタルギー (Wikipedia)

 

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