ワクワクする夜の世界『はんなちゃんがめをさましたら』
夜中に目を覚ましてしまった小さなはんなちゃん。家族みんなが寝静まった暗い家の中で、猫のチロと一緒に探検を始めます。子どもには時に怖くてたまらないものに感じる夜中の目覚めや暗い家の中。作者の酒井駒子さんの穏やかで夢を見ているような独特な世界の中で、夜や暗闇が、深い広がりを持ったワクワクする世界として描き出される絵本『はんなちゃんがめをさましたら』。「夜」や「眠ること」がちょっぴり不安な小さなお子さんと一緒に、お休み前にゆったりと読むのもおすすめしたい絵本です。
猫のチロと真夜中の時間を謳歌するはんなちゃん
お姉さんもお父さんもお母さんも、みんなまだスヤスヤ眠っている真夜中。目を覚まして最初はびっくりしたはんなちゃんが、その後あまり動じずに行動しているのは、猫のチロが目を覚まして寄り添ってくれたからかもしれません。夜中にチロと一緒に階段を下りて、トイレに行き、つまみ食いをして、暗闇が広がる外を窓のこちらから眺め、お姉さんのおもちゃを寝床に引き込んで大満足。見ているのはチロだけ。自由で不思議な時間を謳歌するはんなちゃんは、たくましくも見えます。子どもにも大人にも、きっと安眠効果が
皆さんは、夜中にふと目を覚ましてしまったら、どんなふうに感じるでしょうか? ああ、変な時間に目を覚ましちゃった。早く寝なきゃ朝が辛いな。困った、なかなか寝られないな……。大人になり、さらに子どものいる生活になると、休日でさえ寝坊をすることはなかなかできなくなるので、はんなちゃんのように、夜中に起きたその時点から自分の好きなことをするなんて、なかなかできません。そして、白々と夜が明けてきたら突然まぶたが重くなってきて眠りに入ってしまうはんなちゃん。心の赴くままに行動している様子がとてもほほえましく、何だか子どものころに戻りたくなるような羨ましい気分にもなります。ぜひ、夜のお休み前にお子さんと一緒にゆったり読んでみてください。子どもは「眠ってしまう」ということに、漠然とした不安を抱いていることがあります。そんな子どもの気持ちをリラックスさせ、夜を経て朝が来ることを楽しみにさせてくれるとともに、はんなちゃんのささやかな子どもらしい自由な時間が、大人の心も解放してくれるのではないかなあと思います。安眠を誘う1冊としてもおすすめします。