自動車保険が大半、火災保険ではこんなケースが
2013年度上半期(4~9月)の苦情や紛争の対応状況を見てみましょう。苦情解決手続きでは新規受け付けが1276件、そのうち80.2%が自動車保険に関する苦情で、火災保険については7.2%となっています。一方、手続きが終了した案件のうち、苦情解決手続きで解決したものは80.9%、紛争解決手続きに移行したものは8.1%となっています。こうして紛争解決手続きが行われたもののうち、解決に至ったものは19.3%。つまり、不調に終わったものも少なくないということです。それはADRが、当事者が譲り合い和解を目指すものであるため、事故発生の有無を争う紛争などにはなじみにくいといった理由もあるようです。
手続き終了までの期間は、苦情解決手続きでは3か月未満までが約6割、紛争解決手続きでは6か月未満のものは約6割となっています。
火災保険について行われた苦情の代表的な事例を挙げてみましょう。
紛争についての事例はどうでしょうか。自宅のテレビの液晶画面が子供の不注意により破損、代理店に報告したところ火災保険の補償対象になると説明されたため修理をしたが、その後 「液晶画面のみの損傷であるため補償されない」と逆の説明をされた。テレビは液晶画面が大半でパンフレットに描かれたイラストからも補償対象外と認識するのは困難。他社では対象としているケースもあり保険会社の判断には納得できない。(※筆者一部加筆、要約)
【対応と経過】
申出人からの苦情申し出を受け、保険会社ではパンフレットや重要事項説明書記載内容の適切性を慎重に確認し問題がなかった旨を契約者に説明した。その後申出人からの連絡はなく手続き終了となった。
東日本大震災により家財に損害が発生、地震保険における半損に該当するとして保険金の支払いを求めたところ、保険会社が一部損と認定、紛争解決手続きの申し立てが行われた。(※筆者一部加筆、要約)
【対応と経過】
申立人は地震により建物の屋根に亀裂が生じ、これによる建物内への漏水によって多くの家財に損傷が生じた旨を主張、一方保険会社は漏水の原因は屋根コンクリート等の経年劣化によるものであり東日本大震災による損傷ではない旨を主張した。当事者双方から提出された資料や、参考人である第三者の専門家からの見解に基づき検討の結果、建物の損害は一部損に該当すると確認。損害程度を一部損とする内容の和解案を提示して受諾を勧告したが、申立人から期日までに受諾書の提出がなく、紛争解決手続きによる和解成立の見込みはないとされ、手続きは終了、つまり不調に終わった。
契約時の説明は納得できるまでよく聞いて、後のトラブルを防止
納得できるまで説明を受けて、トラブル回避を
いずれにしろ、ADRは当事者の歩み寄りにより初めて問題を解決できる仕組みなので、紛争のケースによっては限界があります。契約後のやっかいなトラブルを可能な限り回避するためには、保険がどのような時に支払われ、逆にどのような時に支払われないのか、契約者である私たちが誤解なく理解しておくことでしょう。
火災保険にしろ自動車保険にしろ、めったに起きないけれど、ひとたび起きれば家計に大きな経済的ダメージを及ぼす災害をカバーするものだけに、私たちはいざというときにこれらに頼らざるを得ません。だからこそ安心して頼れるよう、わからない点はきちん理解できるまで説明を受け、納得して契約に至りたいものです。
【関連リンク】
損保協会 そんぽADRセンター