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ケープ・レシオを活用して業種を絞り込む投資信託

新しい投資対象、新しい運用スタイルにほぼ出尽くし感のある投資信託。2013年度は近年になく多くの新規設定のファンドが登場しました。そのほとんどはNISA対応を謳ったバランス型の投資信託です。機動的なリバランスが売りのようですが、目新しさがあるわけではありません。そのような1年度の締めくくりに、日本初の運用スタイルを用いた投資信託が設定されたので見ていくことにしましょう。

深野 康彦

執筆者:深野 康彦

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投資対象の選択に物価の変動を加味する

2014年3月24日に新規設定された新光投信が運用する「新光シラー・ケープ米欧株式戦略ファンド(リスクコントロール付)」。米国および欧州の株式を投資対象とする業種別ETF(上場投資信託)で、新光シラー・ケープ米欧株式戦略を活用して、トータル・リターンの向上を目指して運用されます。

「シラー・ケープ米欧株式戦略」とは聞き慣れない投資スタイルと言えますが、2013年ノーベル経済学賞を受賞した、米国エール大学のロバート・シラー教授が開発した「ケープ・レシオ」を活用した投資戦略です。

ケープ・レシオは、「景気循環調整後PER」とも呼ばれ、過去10年間の物価変動の影響を考慮した指標で、一般的な指標であるPER(株価収益率)と比較して、より中長期の投資尺度として活用されています。

少し小難しい説明になってしまいましたが、経済指標に「名目値」と物価の変動を加味した「実質値」があるように、株式投資の指標であるPERにも物価変動を加味した実質PERを使って投資対象を選択するということです。

新光シラー・ケープ米欧株式戦略ファンド(リスクコントロール付)」は、このケープ・レシオを活用して、米国および欧州株式市場の主要10業種から4業種ずつを選択、計8本の業種別ETFで運用が行われます。為替ヘッジあり、為替ヘッジなしの2つのコースが用意されています。

実際の運用では、ケープ・レシオを活用した3つの戦略に基づいて運用されることから、もう少し詳しく見ていくことにしましょう。

3つの戦略でトータル・リターンを向上させる

新光シラー・ケープ米欧株式戦略ファンド(リスクコントロール付)」は、新光シラー・ケープ米欧株式戦略を構成する「セクター・アロケーション戦略」、「カントリー・アロケーション戦略」および「リスク・コントロール戦略」を活用して実際の運用は行われます。

セクター・アロケーション戦略では、ケープ・レシオを用いて、米国および欧州の株式の中から、セクター(業種)間の相対的な割安・割高の度合いを判断して、割安と判断されるそれぞれ5セクターを選出。そして、過去1年のリターンが優位な(リターンが劣る1セクターを除外)それぞれ4セクターに絞り込むことになります。選定セクターは毎月見直しが行われています。

ちなみにケープ・レシオの2013年末時点の実績は、米国は2002年9月以降でS&P500種株価指数を54%、欧州は2008年12月以降でMSCI欧州株価指数を26%上回っています。

カントリー・アロケーション戦略では、基本地域配分を米国:欧州=7:3とし、OECD景気先行指数を基に、経済環境が相対的に良好と見込まれる地域に配分を増やす変更(見直し)を毎月行っています。たとえば、欧州が強い局面では、米国:欧州=5:5に変更、米国が強い局面では、米国:欧州=9:1などというように変更します。

リスク・コントロール戦略では、株式市場全体の動きによる各コースへの影響をコントロールするために、VIX指数、VXV指数を活用し、価格変動リスクの低減を図っています。市場環境が急変した場合は、先物取引を活用して実質的な株式の組入れ比率を概ね0%まで引き下げるリスク回避を意識した運用を行っています。

日本初の運用スタイルを持つ投資信託。今後の運用過程が気になる投資信託のひとつと言えそうです。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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