動き続ける鶏や魚に含まれるイミダゾールジペプチド
カツオにもイミダゾールジペプチドが含まれ、鰹だしの疲労回復作用について、研究が重ねられています。
近年になってよく聞かれるようになりましたが、このアミノ酸が発見されたのは、もう100年も前のこと。様々な種類の脊椎動物で発見されましたが、渡り鳥の骨格筋中に豊富に含まれていることが分かりました。
中でも羽を動かす胸肉の部分に、特に豊富に含まれていることがわかりました。鶏は、羽根が退化し飛べない鳥ですが、やはり鶏胸肉にはイミダゾールジペプチドが多く含まれています。個体差もあるのですが、100g中に数百mg含まれていると見られています。
様々な研究から、イミダゾールジペプチドについて、安全性に問題のない一日の接収量の目安は、200~400mgと考えられています。ただし、これは一回摂取すればたちまち効くというようなものではなく、毎日疲労を自覚している健常者を対象に摂取後数週間後の試験という条件においてです。
煮込み料理が無駄なく! イミダゾールジペプチドの食べ方
効率の良い食べ方としては、水溶性アミノ酸なので、肉汁の流出量に応じて損失量は多くなります。肉汁の損失を減らすためには、スープやシチューのように煮込み料理にして煮汁ごと食べると、水分に溶け出したイミダゾールジペプチドを摂取しやすいそうです。また近年は調理器具メーカーでも、イミダゾールジペプチドへの影響についての研究が熱心で、例えば真空保温調理の「シャトルシェフ」(サーモス株式会社)では、「保温調理によって約9割残存させる」という測定結果を発表しています。これは蒸す、茹でるという調理と比較しても高く、保温調理は肉汁の損失が少ないことによるものと考えられています。他にもウォーターオーブン「ヘルシオ」(シャープ)の一部商品でも、一般の蒸し器で調理した場合と比べて残存率が高いとしています。
高齢社会で課題となる日常での心身の健康づくり
近年、魚は積極的に食べるようにと進められますが、メタボ予防のため肉類は控えめにしている人もいます。ガイドも、食べ過ぎて肥満にいたっている人には食べ過ぎないようにとは言いますが、まったく食べないのも問題だと思います。特に今問題視されているのは老人で肉類摂取が極端に少ない人がいることで、栄養不足からの筋肉減少(サルコペニア)などが問題となっています。日本ハムと埼玉県立大学の研究報告によると、カルノシン,アンセリンを高濃度に含有する鶏肉抽出物の摂取が、中高齢者(20名での実験)の筋力の向上に有効という考えを示しています。
また若い女性でベジタリアン志向などから、肉や魚の動物性食品をまったく食べない人もいて、中には貧血などから疲労感が抜けず、体調不良になる人もいます。肉や魚は吸収のよい鉄分を含むので、体調を考えずにあまり極端に避けるのも問題です。
魚とともに肉類も、良質のタンパク源であり、食べ過ぎはいけませんが、適度に摂取することは必要なことです。また基本的なことですが、イミダゾールジペプチドがよいからといって、肉や魚に偏った食べ方をするのではなく、エネルギーとなる栄養素や、代謝に関わり体の調子を整えるビタミン、ミネラル、他に食物繊維など、幅広い食品から様々な栄養成分を摂取することが重要です。
関連リンク/
- 大阪市が産官学で取り組む「抗疲労食プロジェクト」(食と健康)
- タフなカツオのスタミナ源で疲労回復をサポート(食と健康)
- ストレス解消に、こってりラーメンよりカツオだしのススメ(食と健康)
参考/
- 肉類ペプチドに脳萎縮抑制効果・神経心理機能強化の可能性(東京大学大学院新領域創成科学研究科)
- 新機抗疲労能成分:イミダゾールジペプチド(日本補完代替医療学会誌)
- イミダゾールジペプチド配合飲料の日常作業の中で疲労を自覚している健常者に対する継続摂取による有用性(Jpn Pharmacol Ther vol.37 no.3 2009)
- 鯨類捕獲調査で得られた鯨類体内におけるイミダゾールジペプチド類の比較(北水試研報 74,25-28 2009)
- 大阪市立大学 健康科学イノベーションセンター
- 鶏肉抽出物の摂取が中高齢者の筋力に及ぼす影響(日本食品科学工学会誌Vol.59(2012)No.4p.182-185)
- 保温調理に関する共同研究報告(サーモス株式会社)