仕事ができない人、貧乏な人ほど窮地に弱い
ピンチに陥ったとき、他人から批判されたとき、あなたはどういう態度を取るでしょうか。ここでパニックになって「どうしよう」とアタフタしたり、「何だと!」と逆上するという反応をすると、部下や家族、友人からがっかりされます。精神的な余裕と自分に対する自信がなく映る人を誰も頼りにしようとはしないでしょう。こんなとき、周囲から信頼を得られる人は、ユーモアで切り抜けることがあります。たとえば知人の経営者から、こんな話を聞きました。
ある技術者が、最先端の製造装置を導入すれば生産性が30%アップするという提案をしました。彼はその提案に強い自信を持っていたこともあり、社長以下重役がずらりと居並ぶ経営会議で、つい「これを導入しないのはバカではないかと……」という言葉が出かかってしまったのです。
「しまった!」と引っ込めても後の祭り。会議室は一瞬にして凍りつき、重役たちは怒りに震える表情で、彼をジロリを睨んだそうです。彼は「ああ、俺は地方支社へ左遷だな……」と観念したのだそうが、それを救ったのは社長のこんな一言でした。
「○○くん、君は今、我が社の重要機密を漏らしたね」
これで会議室は大爆笑。それまで苦虫を噛み潰したような顔をしていた重役も、涙を流して笑い、もはや彼を責めようという空気はどこかへ飛んでしまったのです。もちろん、彼の提案も採用されたそうです。
この会社は業界でナンバーワンシェアを持つため、ライバル他社からの技術者の引抜き合戦が激しいのですが、社長が作るそんな社風からか、人材流出は少なく、技術面でも他社をリードしているとのこと。
また、これは有名な話なので知っている人も多いかもしれませんが、かつて(というかかなり昔)議員選挙での候補者同士の討論会でのこと。
ある候補が、「愛人が3人いるとスッパ抜かれたそうだな。そんないいかげんな人物には政治は任せられない」とライバル候補から厳しい追求を受けました。それに対して当の候補は、「それは違うな。3人じゃあない。事実は5人だ。数も数えられない人物に政治は任せられんな」と答え、会場は爆笑の渦。結局その彼が当選を果たしたというオチです。
さらに、「某候補は家賃を2年も払っていない。それどころか米屋にコメ代を1年間払っていないらしい」という指摘を受けたときのこと。その彼は演説会で、「某候補とは私のことだが、発言した候補者は大きな間違いをしている。家賃を払っていないのは2年ではなく3年で、払っていないコメ代も2年だ」と笑いを取って批判をかわし、やはり当選を果たしたのだそうです。
もちろん、前述の企業が成長した理由も、政治家が選挙に当選した理由もそれだけではないでしょう。先ほどの政治家の話は、本当かどうかわかりませんし、現在ならむしろ炎上するかもしれません。
とはいえここで重要なのは、うまくいく人ほど窮地でもユーモアを忘れないということです。
仕事ができない人、貧乏な人ほど窮地に弱く、逆境に直面すると心の余裕をなくしてイライラします。自分への批判は人格批判と拡大解釈し、保身の気持ちが優先するため、すぐムキになったり他人のせいにしたりします。それはかえって周囲からの信頼をなくし、墓穴を掘るものです。
なぜなら、ピンチの場面であたふたするような人材、批判されて逆上するような人材に、大事な仕事を任せることはできないと判断されるからです。
そんな場面でもユーモアで周囲を鼓舞すると、周囲が和み、場の空気を支配することができる。度量の大きさを示すことができ、「頼もしい」と尊敬を集めることができるのです。そんな人に、仕事もチャンスも集まってくるのではないでしょうか。