専門外の領域でも日々研鑽が大切
マンション管理士の役割
このような状況において、マンション管理士が管理組合に対してどのようなコンサルティングを行うのかをご紹介します。(1) 管理委託費の原価構造を分析する
管理委託契約は、管理会社自身の社員が実施する業務と、それ以外の業務に大きく分かれます。
後者については、エレベータなど設備保守管理業務や清掃業務などがあり、管理会社が管理組合から請け負う形で受託しながら、各専門業者に再委託するのが通常です。
実際の管理委託費には、これらの業務を含めて管理会社が元請けすることに伴うマージンがかなり含まれています。つまり、専門業者と管理会社のマージンを二重に負担していることが割高な原因といえます。
この余分なマージンを算出するには、各専門業務の標準コストを把握しておく必要があります。
(2) 管理仕様が妥当かを検討する
コストの適正化もさることながら、管理仕様についても新築当時から見直すこともなく、放置されることが多いようです。
たとえば、大規模なマンションでもないのに、管理人が毎日朝から夕方まで駐在している、管理人の他に清掃員を配置しているなどの事例は珍しくありません。
また、管理会社の社員として負担が重いのは、主に理事会や総会の運営業務です。実態として、理事会をあまり開催しないにもかかわらず、高い報酬を設定しているケースもあります。
(3) 光熱費や保険も見直す
管理コストの大半は管理委託費が占めていますが、光熱費やマンション保険料についても見直す余地はあります。
たとえば、LED照明や電子ブレーカーを共用部に導入することで、電力料金は確実に下がります。
また、規模の大きいマンションでは、電力の自由化に伴い、管理組合が大口契約者となって高圧一括受電することで、専有住戸を含めて割安に電力を購入できるようになりました。
保険料についても、1996年の自由化以降、各保険会社の商品内容にかなり違いが出ています。また、1年契約よりも5年契約の一括払いの方が、掛捨て型よりも積立型の方が、それぞれ保険料が安くなるのですが、これもほとんど知られていません。
これらのことは、素人集団の管理組合にとって学ぶ機会がないのが現状です。唯一の情報源は管理会社ですが、利益相反やコンサルティング力の不足もあり、管理組合にソリューションを提案することはほとんど期待できません。
マンション管理士にとっても、これらは専門外の分野ですが、管理会社との差別化戦略として管理組合の真のパートナーたり得るには、一定の知識と情報を備え、適宜助言・提案を行えるようにしておきたいものです。