自分だけの場所がほしい兄心『ひみつのばしょみつけた』
今までベンが1人で寝ていた子ども部屋で、弟のエズラが一緒に寝ることに。そしてエズラは後追い真っ盛りで、どこにでもついてくるのです。自分のなわばりにズケズケと入られているような気分になったベンは、面白くありません。1人きりでだれにもじゃまされずに遊べる場所を、家中探し回りました。そしてようやく、「ひみつのばしょみつけた!」。下の子が赤ちゃんの時は、どこかで「まだまだ赤ちゃんだから」と思ってそれほどその存在を気にすることがなかった上の子でも、下の子が歩き回るようになり、おしゃべりして自己主張が始まるようになってくると、れっきとしたライバル! 自分の地位を脅かされるような気持ちになる場合もありますね。
絵本『ひみつのばしょみつけた』
すべてそろった秘密基地だけど、何か足りない!?
ガレージの奥の空きスペースに、いすやおもちゃやおやつを持ち込み……。誰かがじゃまをしにくることもなく、すっかり大満足のはずだったのですが、微妙な表情を浮かべているベン。不安定に重ねられた積み木と恐竜の人形が、ベンの幼さを表しています。猫のミューミューに声をかけたり、犬のアリーを連れてきたり、お母さんやお父さんのところに行ってみたりしますが、誰もベンの遊び相手にはなってくれません。仕方なくベンは、家の前に座って「誰か」が来るのを待ちました。そうしたら、やっぱり! ベンの顔が一瞬にして輝きます。
ちょっぴりうっとうしくて、かわいくてたまらない……。すべてありのままの心
親子の関係もそうですが、兄弟姉妹として生まれるというのも、とても不思議な縁。特に小さい時は、意地悪をしたりけんかをしたりすることも多いですが、けんかした数分後にまた仲良く遊んでいるのも兄弟模様の面白いところ。距離が近い分、衝突も多いのですね。ベンはとても穏やかなお兄ちゃん。弟に、ちょっぴりうっとうしさを感じてしまってさりげなく距離を置こうとしたのですが、自分の中に、弟を必要とする気持ちもあることに気づきました。両方ともベンのありのままの心です。
お互いの存在を認め合っていく小さな兄弟の姿をシンプルに描いた絵本。夫婦も親子も少しずつ信頼関係を築いていくのと同じように、兄弟も成長の過程で色々な感情を抱き合いながら、絆を深めていくのでしょう。