食と健康/魅力の食材・成分(肉・魚介・野菜・フルーツなど)

アスリートにおススメ! シカ肉の栄養成分とは(2ページ目)

近年は、趣味でマラソンやロードバイクを楽しむ人が増え、アスリートとまではいかなくても、運動能力を高めるための食事に関心も高まっています。低脂肪・高タンパクで鉄分豊富なシカ肉は、アスリートにおすすめ! その試食会に参加してきました。

南 恵子

執筆者:南 恵子

NR・サプリメントアドバイザー / 食と健康ガイド


エネルギー代謝を促すカルニチンを含むシカ肉

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各自治体で安全にシカ肉を処理するガイドラインが策定され、シカ肉の加工品も出回り始めています。

シカ肉は、脂質は少ないですが質がよく(多価不飽和脂肪酸の比率が高い脂肪酸を含む)、高たんぱく、低カロリーで、鉄分などのミネラルも豊富であるという特長があります。

今回は特にアスリートむけの提案ということで、兵庫県立大学 環境人間学部の吉村美紀氏がシカ肉に含まれる「カルニチン」について紹介されました。

カルニチンは、脂質のエネルギー代謝に関わると考えられ、疲労やストレス軽減などの機能性があるとのではないかと考えられています。

吉村氏は、種々のカルニチン類を同時に検出したところ、遊離カルニチン、 アシルカルニチであるアセチルカルニチン、ヘキサノイルカルニチン、 ミリストイルカルニチン、パルミトイルカルニチンの 5 種類を検出しました。特に遊離カルニチン、アセチルカルニチン、ヘキサノイルカルニチンは、牛肉・豚肉・鶏肉と比較してシカ肉に多く含まれ、シカ肉にはカルニチンの補給源として期待できると考えられます。

またシカ肉を調理することで、遊離カルニチン、アセチルカルニチンは損失傾向に、ヘキサノ イルカルニチン、ミリストイルカルニチン、パルミトイルカルニチは増加傾向になりました。遊離カルニチンは親水性、アシルカルニチン類は疎水性であり、煮る調理と揚げる調理では親水性、疎水性の影響と共に、加熱調理後の肉汁の流出量によって、損失率、増加率が変化するのではないかと推察されました。しかし、煮込み料理で煮汁ごと食べることで、流出したカルニチンを摂取することはできるとのことでした。
 
吉村氏にカルニチンについての注意点をお聞きしたところ、これまで説明したようなメリットもある一方、長期間カルニチンを摂取して腸内細菌で代謝される過程で酸化すると動脈硬化を促進するという報告もあるなど議論もある段階です。高齢者のような動脈硬化が増える世代には、単独の成分だけを濃縮したサプリメントのような食品を摂取する場合には注意が必要であり、シカ肉のような食品として食べる場合も偏った食べ方ではなくバランスのとれた食事が基本的に大切だと強調されました。

ウェイトコントロールをしても持久力をキープ!

この後、スポーツ栄養士からは鉄分の豊富さのメリットが紹介されました。鉄分不足というと、女性のイメージがありますが、実は成長期は男性も不足しがちで、アスリートも貧血予備軍とみられています。

試食会

意見交換、試食などを通じて、様々な立場ひとの交流にもなりました。

鉄分が不足すると酸素を送れず持久力が維持しにくくなります。特にウェイトコントロールが必要な競技は、食事量が少なくする傾向があるので、貧血になるリスクがあるため注意が必要と説明されました。

さらにアスリートとして、実際にシカ肉を食事に取り入れている「ボクシングジムしんせい」からは、シカ肉を使うようになってから、低カロリーなのでボリューム感のある食事をとっても減量がうまくいき、おいしいので満足感がある、また疲れにくいと実感している、といった感想が紹介されました。

厳しいウェイトコントロールがつきもののアスリートはもちろん、成長期の男子、またダイエットが気になる女性たちの健康にも役立つ素材としても、シカ肉には注目が集まりそうです。

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