毎月分配型を個人投資家に広めた功労者
わが国に毎月分配型投資信託という商品を知らしめた投資信託が、「グロソブ」の愛称で親しまれている、国際投信投資顧問が運用する「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」です。1997年12月18日に設定されていることから、運用が開始されてから16年3カ月の履歴を持つ長寿ファンドの1本ということができます。余談ですが、グロソブがわが国初の毎月分配型投資信託と思われている人がいますが、わが国初は、アライアンス・バーンスタイン株式会社が運用する「アライアンス・バーンスタイン・ハイ・イールド・オープン」です。設定年はグロソブと同じく1997年ですが、設定日が1月31日であることから約10ヵ月強早く設定されています。
グロソブが人気を博した理由はさまざまですが、1つには投資信託の販売方法、正確には販売した後のフォローが大きかったと考えられます。現在でこそ、運用会社の担当者が運用過程の報告会を当たり前のように行っていますが、グロソブが設定されてから数年間は運用報告会的なものはほとんど行われていませんでした。
グロソブに関しては、「グロソブの会」と称して定期的に運用報告会を行ったことが投資家に安心感を与え、また、定期的(毎月)に分配金を受け取れることで、投資信託へ投資して儲けることができると投資家が理解したことが大きいと考えられます。
もちろん、販売会社の数が右肩上がりで増えたこと、銀行で投資信託の取扱いが始まったこと、1990年代の高金利局面に預けた預金などの受け皿になった等々、さまざまな理由をあげることはできますが、毎月分配型投資信託を広めた功労者であることは疑いの余地はありません。
投資家の欲求は高い分配型に変化
最盛期の2008年8月には、純資産総額を約5兆8000億円まで増やし、世界でも有数の規模に成長したグロソブ。その後、リーマンショックなどの度重なる金融危機などを経て、2014年4月1日には純資産総額を約1兆1950億円まで減少。同日にフィデリティ投信が運用する「フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド」に約47億円の差を付けられて、純資産総額トップの座を明け渡すことになりました。リーマンショックなどの金融危機は、いずれの投資信託にも共通して影響を及ぼしたのですが、個人投資家が毎月分配型投資信託に求める尺度について行けなかったことが純資産総額のトップの座を明け渡した要因と考えられます。
かつて毎月分配型投資信託に求められていた尺度は、安定した分配金を受け取れるかどうかでした。しかし、近年では安定した分配金から高額の分配金へと尺度が変わりつつあるのです。筆者の記憶が正しければ、通貨選択型投資信託が登場した2009年1月以降、毎月分配型投資信託の高分配競争に拍車がかかったようです。
1度、高い分配金の味を占めてしまうと、分配金が少ない毎月分配型投資信託を買おうという気にならないようです。同時に、金融危機が起これば安定した分配金を受け取れる毎月分配型投資信託でも、基準価額は大幅に下落する。だから、貰えるなら高い分配金を貰った方がお得と個人投資家の心境の変化があったように思えてなりません。
2014年3月決算期のグロソブの1万口当たりの分配金は20円、フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドは同70円もあるのです。
純資産総額3位になる可能性大
純資産総額トップの座を明け渡したグローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)が、再びトップの座に戻ることができるのか?と問われれば、難しい気がしてなりません。先進諸国はいずれも金融緩和政策を継続していることから、投資対象である債券からの利子収入が大幅に増加することは考えにくいこと。加えて、先進国諸国の金利はボトム圏にあることから、債券の売却収入も期待しづらいのです。為替が円安になったとしても、それは他の毎月分配型投資信託と条件は変わりません。(為替ヘッジなしの場合)
個人投資家の投資スタイルも安定志向に戻ることは考えにくいことから、既に毎月分配型投資信託を保有している人に遡及していくのは難しいと言わざるを得ません。可能性があるとすれば、今まで投資を行ってこなかった人に、投資の第1歩目の商品として遡及していくことになるかと思われます。運用で逆転が期待できにくいことから、地道に普及活動を行っていくしか当面はない気がします。
復活の鍵は新たな個人投資家をいかに取り込めるかにかかっているでしょう。純資産総額3位の新光投信が運用する「新光US-REITオープン」との差も、約48億円であることから4月中には3位に落ちる可能性は高いと思われます。まずは、資金流出を止めるところからスタートすべきだと思われます。頑張れ「グロソブ」!
※本文中では「元本払戻金(特別分配金)」は考慮しておらず、純資産総額にはETFを含んでおりません。