新興国ショックを軽微で切り抜ける
2014年1月下旬にアルゼンチンペソが暴落し、瞬く間に他の新興国に拡散した新興国ショック。新興国株を投資対象とする投資信託の中には、運用成績の急落の憂き目にあったようですが、マニュライフ・インベストメンツ・ジャパンが運用する「マニュライフ・アジア・オセアニア小型成長株ファンド」は軽微の影響で済んでいます。2014年2月末基準のマンスリーレポートでは、騰落率が1ヵ月=3.41%、3ヵ月=3.59%、6ヵ月=17.64%となっています。新興国を投資対象とする投資信託の運用成績は芳しくないのでは?と思ってしまいますが、良好な運用成績と言えるでしょう。
同ファンドが投資対象とするのは、時価総額が概ね1億米ドル以上~30億米ドル以下のアジア・オセアニアの小型株式ですが、実際の銘柄選択では流動性が高いことが大前提となっています。投資対象は、潤沢なキャッシュフローや、高水準の利益成長率の前途有望な銘柄です。
鍵は、証券会社のアナリストによる英文レポートがなく、カタリスト(株価上昇の誘因)が発生しないうちに投資することにあるようです。カタリストとは、新製品の発表、製品価格の上昇、大胆なリストラや経費削減、市場シェア拡大が期待できる契約の獲得、企業利益の上方修正を指しています。
投資対象企業がこのようなカタリストにあたる情報を発表すると、より多くのアナリストが銘柄のフォローを行うようになり、英文のレポートも発表され機関投資家などの資金がその銘柄に流入。結果として株価が上昇したところを同ファンドは売り抜けることから、売買回転率は高くなるところに特徴があります。
銘柄分散と売買回転率が高い収益の源泉
2014年3月27日に行われたメディアブリーフィングを受けて、運用の経過を見ることにしましょう。アジア小型株式に注目しているのは、過去10年間の長期にわたり、ほとんどの投資局面において大型株式をアウトパフォームしていること。小型株は証券会社等が発信する情報が少ないことから、市場にて企業の本質的価値が見出されていないケースが多く存在するため、企業の本質的価値が市場で認知される前に投資することができるようです。
また、運用スタイルは絶対リターン志向で行われています。絶対リターンと言えば、ヘッジファントが想起されますが、デリバティブやショートポジョン(カラ売り)などは一切行わず、ロングポジション(買い)だけで運用されています。
銘柄選択においては、100%ボトムアップスタイルで運用されています。国別、業種別の配分比率は制限が設けられていなく、銘柄重視で投資対象は絞られていくようです。また、できる限り分散投資を行い、かつ売買回転率を年間200~300%に高めて収益を積み上げ行くスタイルが功を奏しているようです。
マンスリーレポートから、2014年2月末の純資産総額は32.3億円と少ないものの、組入銘柄数は164銘柄に分散されています。国・地構成比は中国、台湾、韓国、香港が上位を占め東アジア地域に約8割が投資されているのは、同地域の高い成長率並びにマーケットの流動性を背景としているようです。
運用が開始されてから約7ヵ月経過しましたが、持てるポテンシャルを存分に発揮して良好な運用成績でスタートしたマニュライフ・アジア・オセアニア小型成長株ファンド。純資産総額が少ないのが玉にキズと言えますが、好成績が続けば資金流入が加速すると思われます。
交付目論見書には信託金の上限が700億円となっているが、上限に近づいても好調な運用成績が続くのか、期待を持ってウォッチを続けたい投資信託の1本と言えるでしょう。