2014年4月1日、消費税率が5%から8%へ引き上げられました。1997年4月以来17年ぶりの消費増税で、住宅の駆け込み需要はあったのでしょうか。
オールアバウト「生活トレンド研究所」が実施した「増税前の駆け込み購入(住宅)」に関する調査をもとに、その実態と、次の消費増税に向けた考え方をまとめてみることにしましょう。
なお、調査結果の詳細はオールアバウトによるプレスリリースをご参照ください。
意外と大きかった住宅の駆け込み需要
前回の消費増税の前には多くの駆け込み需要が発生し、増税後はその反動で住宅着工数が2年連続で2ケタ減となるなど、住宅市場が大きく落ち込みました。その反省から今回は住宅ローン控除の拡充、すまい給付金制度の導入など、消費増税による負担の緩和策が早々に決められ、一定の効果があったものとされています。住宅ローン控除の拡充と、すまい給付金制度によって、新築住宅(新築分譲マンション、建売住宅など)では「増税後のほうが実質的に負担は減る」という収入層も多かったはずですが、実際のところはどうだったのでしょうか。
調査の結果をみると「ここ1~2年の間に新築住宅を買った」人の61.3%が「消費税が上がるから」を購入理由に挙げています。
住宅ローン控除の拡充や、すまい給付金制度の導入が明らかになる前(2年以内)の購入者も含まれるため一概に論じることはできませんし、現金購入者や借入額の少ない人など、これらの負担緩和策の対象とならない人もだいぶ存在していると考えられます。
しかし、6割を超える人が消費増税を理由に住宅の購入に踏み切っていることは、十分に留意しなければならないでしょう。このところ住宅市場の回復が進み、新築着工戸数は2014年2月まで18か月連続の増加となっていますが、これからしばらくは減速することも否定できません。
次の消費増税も控えている
まだ正式には決まっていませんが、2015年10月には消費税率10%への再引き上げも予定されています。そのため、次の駆け込み需要が動き出し、住宅市場は早期に回復するという見方も強いようです。アンケート調査の結果では、「住宅購入意欲はあるが、見送った」という人のうち、約半数(50.7%)が「消費税が10%になるまでに購入したいと思っている」という回答でした。
消費税率が10%へ引き上げられるときには、住宅ローン控除の見直しがなく、現状のまま維持される予定です。
すまい給付金の対象者は、年収の目安が「510万円以下」から「775万円以下」の層に拡大され、給付基礎額の最高額も30万円から50万円に引き上げられる予定ですが、負担緩和策としては小幅にとどまります。そのため、今回の消費増税で多くみられた「増税後のほうがトク」といった事例は、次回にはごく限られた条件でしか生じません。
そうなると、2015年10月前に再び住宅の駆け込み需要が大きくなり、その後の住宅市場がかなり低迷することも考えられるでしょう。
消費増税よりも大きな住宅価格の値上がり、住宅ローン金利の上昇
しかし、消費増税よりも影響が大きいのは住宅価格の値上がりです。たとえば、土地価格が2,000万円、建物本体価格が2,000万円の新築マンションで考えてみましょう。消費税が課税されるのは建物分だけですから、税率5%のときの消費税額は100万円、8%のときは160万円、10%のときは200万円です。これをそのまま上乗せした総額は、5%のときに4,100万円、8%のときに4,160万円、10%のときに4,200万円です。
つまり総額の上げ幅でいえば、8%への増税時に1.46%(4,100万円→4,160万円)、10%への増税時に0.96%(4,160万円→4,200万円)にすぎないのです。
それに対して、5%、10%といった住宅価格の値上がりはあっという間です。とくに最近は建築資材の高騰や、建設現場での人手不足による人件費の上昇、さらに大都市圏では地価上昇など、住宅価格の押し上げ要因は目白押しです。
住宅価格の上昇のほか、景気回復が進めば住宅ローン金利の大幅な引き上げも懸念され、これらの要因に比べれば「消費増税は微々たるもの」と言っても過言ではないかもしれません。
ところが、消費増税が「目に見える現象」なのに対して、住宅価格の上昇はなかなか実感できず、気付いたときには「既にかなり上がっていた」ということになるでしょう。それとは逆に、地方圏などではこれから先、さらに住宅価格が下がることも考えられます。
消費増税などに惑わされることなく、それよりも購入したいエリアでの値動きや住宅ローン金利の傾向などを、しっかりと見極めることが大切です。
また、中古住宅を安心して購入できるようにするための取り組みも、このところ急ピッチで進められています。新築住宅にこだわることなく、幅広く検討することも考えてみましょう。
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