内装材と照明の関係
住宅における内装材の選定は、個性を演出するだけでなく、照明とその反射によって空間の雰囲気や明るさ感をも左右します。光がないと色や材質感を見せることはできませんが、光の当て方によっても色や質感が異なって見えます。特にガラスや塗装で光沢のある材質の場合は、映り込みが煩雑な印象になる場合もあるので注意が必要です。その意味で内装材と照明器具の選定、配灯は、表裏一体であるともいえます。照明計画というと照明器具そのものが持つ明るさの出力に頼りがちで、さらに照度に関しても床面や作業面だけにとらわれて、いわゆる平面上だけでの照度計算に終始することがあります。しかしそれでは、空間そのものの明るさ感を予測することは出来ません。
今回は建築設計・施工を株式会社オーワークス、照明コンサルティングを中島龍興照明デザイン研究所が担当しましたT邸の事例を紹介しながら、内装材の見え方に配慮した照明プランニング術をご説明したいと思います。
T邸は1階に車庫と玄関、プレイルーム、2階に子供部屋が2室と主寝室、洗面とトイレ、浴室、3階はLDK一体型の部屋とトイレ、そしてテラスの構成になっています。
弊社では照明効果を最大限に発揮するために照明計算ソフトのDIALuxによる照明器具の配光データを用いた3D照明計算を行い、空間全体の明るさ感を予測しながらプランニングを行っています。
DIALuxは水平面の照度計算だけでなく、天井や壁面、家具などがどう見えるか、3D照明効果のイメージや3Dの照度分布、輝度分布も作成することが出来るソフトです。
立体感のある壁紙を使用した階段スペース
図1(左):階段室の3D照度分布図
写真1(右):手摺にLEDライン照明を内蔵させた階段照明
フロアの上り口天井にダウンライト器具を取り付け、階段のステップ一段一段にも光があたるようにし、手すりにLEDライン照明を内蔵させて、手すり自体が照明器具となるように設計しました。
ライン照明の光はかなり角度のある方向から照明することで、凹凸ある壁紙のデザインを効果的に浮かび上がらせることが出来ました。
またLEDを使用することで、手すりに触れても熱を感じることはなく、手すりそのものも出幅が少なく、コンパクトに製作することが出来ました。
意外と難しい洗面所の照明
図2(左):洗面室の3D照度分布図 写真2(右):洗面室の照明
この照明手法をこれまでの蛍光灯で行うと、蛍光灯は単位長さ当たりの光量が大体決まっており、明るいタイプが多いため、下の洗面器が白色のような仕上げだと、反射光によって顔が下からの光であおられるようになって、不自然な見え方になってしまいます。
しかし、LEDライン照明器具は種類が多く、明るさのバリエーションも豊富なため、適度な明るさになるよう、幾つか想定される光量をDIALuxに入力して、最も照明効果の高いライン照明器具を事前に選ぶことが可能です。
次のページでは、「寝室の照明」と「LDKの照明」をご紹介します。