五感を刺激することでの満足感が健康な食事に
季節感溢れ、香りと彩り豊かな煮物椀。一つひとつの料理に五感が刺激されます。
(画像提供/和の心)
また昆布や鰹ぶしなどの旨味を使うことで、低脂肪・低カロリーで薄味ながらも、満足感が得られます。さらに素材の切り方や盛りつけにも、季節の彩り、器の中に自然の景色を盛り込む繊細な美意識があり、五感を刺激されることでも満足感が得られます。
このような懐石の食事は、たとえ慎ましい日常的な内容だとしても、他の食事にはない清々しさがあります。また茶事全体を通じて、亭主がお客様をもてなすための心がこめられていることでの満足感もあることだと思います。
森先生は、茶の湯は、禅と同じく精神性や行いを磨くものであると同時に、さらに美も包括していると、しばしば言われます。それはただ料理や、茶の湯の道具などに美しい景色を見るのではなく、日常の暮らしの中でも人の心や、生き方などからおもいやりや、ものを大切にする心等の美しさを感じられれば、心豊かに過ごせるということではないか思います。
脂質のとりすぎや野菜不足等の栄養が偏ることから肥満になっている現代人が多い中、次から次へと健康食や健康法が取り上げられています。それらをすべて否定はしませんが、私たちの足下を見ると、すばらしい健康食がすでにあるのです。腹八分目で満足できる健康的な食事を楽しむためには、懐石を初めとする日本の文化の中に存在する日本人ならではの美しい感性も見直したいものだと思います。
*懐石の作法等は、茶道の各流派によっても異なります。
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関連リンク/
参考/
- 『日本料理の歴史』(吉川弘文館)
- 『食の文化を知る事典』(東京堂出版)
- 『食物と日本人』(講談社)
- 『懐石の研究 わび茶の食礼』(淡交社)
- 『禅と食の対話』(ドメス出版)
- 『茶懐石と健康』(淡交社)
- 日本の伝統的食文化としての和食(農林水産省)