阪神淡路大震災以降進化した木造住宅の耐震構造
ただよく精査すると、これらは建築基準法の旧耐震基準(1981年改正)以前の古い木造軸組工法の住宅でした。とはいえ、一般の人たちには木造住宅=「耐震性が低い」と考えられがちでしたから、これまでとは異なる新たな構法が採用されるようになりました。それは集成材と金物による構法です。集成材というのは、木材を複層に重ねて柱や梁などを形成したものです。同じ大きさの柱や梁と比べて構造強度が高まるのが特徴。さらにこれらを金物でしっかりと固定することで、クギなどで固定されていた従来の工法より、より高い構造強度が確保されるようになりました。
今では、集成材と金物による構法は様々なものが開発されており、木造住宅には一般的な構法として普及するようになりました。また、これに加え「耐震壁」として壁材と組み合わせることで、木造軸組住宅でもツーバイフォー工法のような構造体とし、さらに耐震性能を高める工法も普及しています。
より大型の集成材で柱と梁を形成し、それを専用の金物でさらに強固に組み合わせるラーメン構造の建物も開発されています。ラーメン構造とはビルなど大型建築物で使われる構造ですが、その木造版です。ですので木造住宅でも近年、3階建てはももちろん、4階建て、5階建ての住宅も建てられるようになりました。
このように、木造住宅は近年、従来鉄骨造やRC造が主流だった大型建築物の分野にも進出しつつあります。実は国も「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」を制定し、この動きを後押しています。これは木材が低炭素社会の実現のために循環資源であるとの認識に基づくものです。
木造住宅でも耐火性能が大きく向上
これらの事例から、木造住宅が決して耐震性能に劣るものではないことが何となくお分かりいただけると思いますが、では火災対策の部分ではどうでしょうか。色々な見方があるのは承知していますが、私はこの分野ではどのような対策をとるのかで変わってくるのだと思います。具体的には、外壁素材に耐火性能が高いものを採用するかで大きく変わってくるのだと思います。言葉を換えると、住宅の耐火性能は外壁材の性能次第で、構造体が木材であれ鉄であれ、RCであれあまり大差がなくなりつつあるということになります。
もちろんこれは外からの火災を防ぐ、つまり類焼対策という観点です。住宅の防火性能は大地震の二次災害である火災の対策として非常に重要となるのです。例えば、阪神淡路大震災では建物の倒壊ではなく、その後に発生した火災が原因で亡くなられた方の方が多いといわれているからです。
ところで、よくハウスメーカーなどで木材と鉄骨材、RC材を燃やし、どれが一番火に強いかを実験するケースがありますが、私はこの実験にはあまり意味がないと思います。というのも、木材が真っ黒に焦げてしまうような状態になると、おそらくその住宅は住み続けられなくなるだろうと思うからです。
それは鉄骨造だってRC造だってあまり変わりません。もちろん延焼の範囲は変わってくるのでしょうが、それを強調するくらいなら内装材に燃えにくい素材を使うとか、火災警報器の設置や、逃げやすい間取りにする対策の方が、住宅の火災対策としてあるべきかたちだと思います。
要は結論として、現代の住宅事情、特に新築住宅の世界では構造材による優劣の比較はあまり意味が無くなっていると申し上げたいのです。それを気にされるより、居心地の良さや快適性をメインに、どのような住宅を建てたいかを考えた方が良いと思います。
3月はあの痛ましい出来事、東日本大震災が発生した月。ですので、改めて住宅の構造強度や地震対策について目を向けて頂きたいと思い、今回のテーマを選びました。