土地活用のノウハウ/空室対策・賃貸管理・老朽化

原状回復トラブルの解決事例 契約違反への対応(2ページ目)

退去時の原状回復・敷金精算は、ルールの明確化も定着し、スムーズに進むようになりました。それでも、予想もできないようなトラブル事例は皆無とはなりません。どうすれば原状回復トラブルが予防できるのか、考えてみましょう。

谷崎 憲一

執筆者:谷崎 憲一

土地活用ガイド

原状回復トラブルの予防はできないのか

原状回復で守るべきルールは?

原状回復で守るべきルールは?

賃貸住宅経営のリスクとしてつねにつきまとう「原状回復」。この言葉について、国土交通省のガイドラインは、このように定義しています。

「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」。

ここに述べられているような事実があれば、基本として回復のための負担は入居者が負うべきであり、単なる経年変化・通常の使用に基づく損耗であれば、原則それはすでに賃料によって入居者は負担をし終えているというものです。

しかし、どのように定義しても実際のケースは千差万別です。多様な事情を抱えつつ、主観と主観、言い分と言い分とがぶつかりあって、トラブルの発生は絶えません。

では、先ほどのようなあまりにひどい住居の汚損、毀損などによる原状回復トラブルは、予防ができないものなのでしょうか。

そもそも、こうした原状回復トラブルが起こらないようにするには、どうしたらいいのでしょうか。

■ 入居審査を厳格に行なう。
■  国土交通省のガイドライン(首都圏では東京ルール)などを入居者にしっかり丁寧に説明し、理解した旨を書き記した書面にサインをいただく。
■ 入居前に、部屋の中の傷や汚れをチェックしてもらい、それを書き記した紙にサインをいただく。レンタカーを借りる前の手続きと同じです。
■ 上記をしっかりとやってくれる管理会社に管理を委託する。

……などの対策が考えられます。しかしながら、入居者がどんな暮らし方をするのか、予想するのは本当に難しいものです。

私が、過去の経験から、いつも気に留めていることが1点あります。

入居希望者の書いた申込書をじっくり観察してください。乱暴な「なぐり書き」になっていませんか?大事なポイントとしては、「後半になるほど字が荒くなり、空欄が増えていく」、そんな様子が見られたら私は要注意と感じます。

その人は真面目に行なうべき作業への集中力が続かない人かもしれません。生活はだらしなくなりがちで、ゴミ出しルールなどを守るのも不得手である可能性があります。

また、原状回復トラブルの予防策として、入居前に室内を写真撮影して、情報を入居者と事前に共有・確認することもトラブル発生の抑止力となります。ただし、あまりやりすぎると、入居者に余計な居心地の悪さを感じさせかねないので、留意が必要です。

大家さんの姿勢も実は影響大 

入居者は、大家さんを良く見ています

入居者は、大家さんを良く見ています

もう一つ、こんなお話も付け加えておきましょう。

「きれいな環境はそれに合わせたきれいな生活を促しやすい」ということも言えるのです。

たとえば治安の悪化に悩む街で、「街の落書きを消すことから始めよう!」と、美化推進運動が起こることがあります。クリーンな環境をつくり、小さな犯罪も許さないという住民の姿勢を示し、犯罪行為を心理的に犯しにくく仕向ける作戦です。

共同住宅でも、これと同じことが言えます。建物の各共用部分、ゴミ置き場の周辺、郵便受けや掲示板の周辺……。そうした場所の環境につねに気を配り、いつもきれいに管理していれば、「迷惑はかけられない」と入居者が思ってくれるはずです。

原状回復トラブルを巡る暗雲 

さらに、注意を呼びかけたいことがあります。

このところインターネットなどを通じ、「大家さんから敷金を取り返す交渉を代行する」との呼びかけをしている個人や団体が増えているのです。こうした人達は取り返した敷金から手数料を差し引いて自らの収益としているようですが、多くの場合、彼らは弁護士の資格を持っていません。これは弁護士法に違反する可能性の高い行為です。

万が一、このような人達が皆さんの前に現われた場合は、以上を踏まえ、落ち着きながらも毅然とした態度で接することが大切です。

このように対応に苦労を強いられる原状回復トラブルですが、その背景には、概ねご高齢の方が多い大家さんと若い方が中心の入居者という、世代による礼儀感覚や価値観の差もおそらく大きく影響しているでしょう。

そして、大家さんがぜひ知っておかなければならないこと。それは、「原状回復トラブルが裁判に持ち込まれた場合、大家さんが勝てる確率は低い」という事実です。できる限り裁判にならないよう、きちんとした対策と、話し合いを続ける姿勢が必要です。

まとめますと、

■  原状回復トラブルを、賃貸住宅経営に常につきまとうリスクとして、いつも心に
  留めておくこと。
■  発生したときは慌てず、冷静に対処し、幅広い視野を持つこと。
■ そしてこれを好機に変える経済的な余裕をつねに保っておくこと。

……これらが、基本的な対策と考えられます。

トラブルが発生しても解決を先延ばしにせず、新たな入居者確保に目を向けることが健全経営への道につながります。

参考1:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

概要 http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/kaihukugaidokai.pdf

全文 http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/genzyokaifukugaido.pdf

参考2:東京都「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」

http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/juutaku_seisaku/tintai/310-6-jyuutaku.pdf
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