ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

小野田龍之介、遥かな目標【気になる新星vol.6】(3ページ目)

ダンスに歌、演技と3拍子が揃い、近年、『ウェストサイド物語』『ミス・サイゴン』等、様々な大作ミュージカルで活躍中の小野田龍之介さん。今年も『ラブ・ネバー・ダイ』に始まって大役が続く彼に、充実の日々を語っていただきました!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

『Love Chase!!』観劇レポート
キャストそれぞれの持ち味比較が楽しい“恋のから騒ぎ”ミュージカル

『Love Chase!!』写真提供:東宝演劇部

『Love Chase!!』写真提供:東宝演劇部

人間界に降りた夢魔の恋の悪戯をやめさせるべく、神から使わされた天使と悪魔。彼らと、彼らに翻弄される人間たちの恋の騒動を主筋としつつ、ショー的要素も強い楽しいミュージカルが誕生しました。振って振られて、騙しだまされ、時には真実の恋も芽生え……と、脈絡なく繰り広げられるように見えるいくつものシーンが、一幕終盤にぴっと糸を引いて数珠つなぎとなり、“恋のから騒ぎ”の種明かし。と思わせて2幕最後にさらなる種明かしがあり、最後まで目が離せません。
『Love Chase!!』写真提供:東宝演劇部

『Love Chase!!』写真提供:東宝演劇部

時に男、時に女の姿で若者たちを惑わす夢魔役は、水夏希さん。すらりとした容姿、洗練された身のこなしの「彼」が現れると、イケメン揃いの男優陣が(失礼ながら)霞んでしまうのは、客観的に考えれば不思議な現象ですが、水さんのバックボーンである宝塚歌劇団が一世紀をかけて培ってきた、世界的にも類を見ない「男性表現」のたまもの。改めて、日本の演劇表現の豊かさに気づかされます。対する天使役の紫吹淳さんも男女の姿を使い分け、女性の姿の際には(みごとな脚線美もサービスしつつ)柔らかな歌声を披露。この二人の男装での対決ダンスはキレがよく、見ごたえ十分です。
『Love Chase!!』写真提供:東宝演劇部

『Love Chase!!』写真提供:東宝演劇部

いっぽう、夢魔や天使に翻弄される男女を演じるのは、原田優一さん、木村花代さんをはじめとする若手俳優たち。『レ・ミゼラブル』や『ミス・サイゴン』といった海外の大作ミュージカルで活躍している方も多いのですが、今回はいくつものシーンをゼロから作りだし、持てるものを総動員しながら役を膨らませてゆく必要があります。既に形のある海外ミュージカルよりも、むしろハードルは高いのかもしれませんが、俳優たちはダンスに歌に芝居にとそれぞれの持ち味をいかんなく発揮。同じ振付でも青柳塁斗さんは楷書で清々しく、小野田龍之介さんは22歳とは思えないニュアンスのあるダンスといった具合に、個性が浮き彫りになるのも興味深いところです。
『Love Chase!!』写真提供:東宝演劇部

『Love Chase!!』写真提供:東宝演劇部

他愛無いシーンにも懸命に取り組む彼らの姿を観ていると、日本のミュージカル界の今後のためにはもっとこういう舞台があってもいいし、観る側も応援して行くべきではという思いに駆られる本作。若手俳優たちに厳しくも最高の武者修行の場を与えている演出の玉野和紀さんですが、悪魔役としてタップを踏んだり、最後にちょっとおいしい(?)役回りであることが分かったり。“役者”ならではの彼のお茶目さも顔をのぞかせる舞台です。

 
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