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親子で(も)観たいミュ4『魔法をすてたマジョリン』(2ページ目)

子供と一緒に劇場に行ってみたいけど、どんな作品がいいか分からない。そんなパパ、ママにお勧めしたい作品を、抑えておきたいポイントともどもご紹介する「子連れで(も)観たいミュージカル」シリーズ。今回は春休みに開幕する、天真爛漫なこども魔女の成長物語『魔法をすてたマジョリン』をご紹介します。後半は「特別篇」として、マジョリン役の稽古に励む女優さんお二人へのインタビューを掲載。どうぞお楽しみください!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド


マジョリン役に挑む劇団四季女優、若奈まりえさん、長野千紘さんインタビュー

『魔法をすてたマジョリン』稽古より

『魔法をすてたマジョリン』稽古より

開幕まであと1週間ほどの某日、あざみ野の劇団四季を訪れ、稽古直後の若奈まりえさん、長野千紘さんにお話をうかがいました。お二人は2011年、劇団四季研究所に入所。若奈さんはその年にこの『魔法をすてたマジョリン』のタイトルロールで初舞台を踏み、今回が再演。昨年、ファミリーミュージカル『桃次郎の冒険』でヒロイン、すももを演じた長野さんは今回初めてのマジョリン役候補。同期の二人が仲良く支え合い、大役に挑戦していることが、インタビューでフォローしあう様子からもうかがえました。

――『魔法をすてたマジョリン』は子供の頃にご覧になっている方も多いようですが、お二人はいかがですか?

 若奈
『魔法をすてたマジョリン』撮影:阿部章仁

『魔法をすてたマジョリン』撮影:阿部章仁

私は観るよりも先に、(11年に出演候補になり)台本をいただいたのが、作品に触れた最初です。右も左も分からないままの初舞台で、カンパニーの中でも最年少だったので、当時は当たって砕けろの精神で必死に取り組んでいました。今になって作品が見えてきた分、今回のほうがお稽古は大変です。

長野 私も子供時代には観ていなくて、初めて観たのが若奈の出ていた『マジョリン』。同期が主役をやっているのを観て、“劇団四季では、こういうことをやれるようにならなければいけないのか……”と圧倒されました。

――稽古も佳境を迎えた今、『マジョリン』はどんな作品だと感じていますか?

若奈 とてもあったかい作品。色に例えるなら、オレンジ色でしょうか。人として忘れてはいけない、大切なことが詰まった作品です。以前の公演から3年、他の作品を経験させていただいてきて、今、もう一度挑戦したかった作品です。

長野 日ごろ生活をしていて忘れがちな感謝の気持ちや、人を思いやったり、人のために何をするのかがテーマだと思います。私は去年、『桃次郎の冒険』で全国公演に出演する中で、お見送りの際、子供たちの反応をダイレクトに感じ、この純粋な気持ちをずっと持ち続けてほしいなと感じました。『マジョリン』をご覧になった方にも、何かあったかいものを感じていただけるといいなと思います。

――マジョリンはどんな女の子でしょうか?

『魔法をすてたマジョリン』稽古より

『魔法をすてたマジョリン』稽古より

若奈 色に例えると無色透明の、本当に純粋な女の子です。ブツクサスというばあやと二人暮らしですが、のびのびと育っていて、魔女が何かもよく知らない。ブツクサスが“魔女は悪いことをするのだよ”と言ってくれるだけで、まだ実感はなくて、本当に純粋無垢です。

長野 純粋で好奇心旺盛で、自分の意思が強い女の子です。村で出会ったダビッドたちからいろんなことを学んで、自我が芽生えてくる。自分が何をしたいかをしっかり決められる子だと思います。

――本作は登場人物と観客が一緒に歌を歌うという意味で、『はだかの王様』タイプのお芝居ですね。お客さんと一緒に歌うのはどんな感じですか?

若奈 お客様に参加していただくことに必死で、どんな感じかと改まって考えたことがありませんでした(笑)。マジョリンがダビッドに教えてもらった歌を一生懸命歌って、「できるかもしれない」と思うのだけど、すぐに(魔女たちの歌声にかき消されて)劣勢になる。そこにダビッドが来て、一緒に歌う。でもまだダメ。村人たちが来て一緒に歌う。それでもダメ。それで、「皆さん、お願いです!一緒に歌って下さい」と。あの場面で、会場中の声が一つになると、場面が一変して、感動的なフィナーレへ向かうんです。重要なポイントですよね。

長野 私はお客様が歌で参加する作品は今回が初めてなのですが、歌っていただくことってすごく大変なんじゃないかと思います。『桃次郎~』の時に、様々なリアクションがあって。子どもの目って大人の目よりシビアだなと思いました。“本当はそう思ってないよね”と見抜かれているようで、“私、嘘のお芝居したのかな、今日”と落ち込んだこともあります。とにかく、一緒に歌ってもらうには、マジョリンと子供たちが思いを共有していなければいけない。そのために、私の中で一本筋を通した状態にしないといけないんです。稽古の課題です。

――『マジョリン』で好きな台詞は?

『魔法をすてたマジョリン』稽古より

『魔法をすてたマジョリン』稽古より

長野 私は、二幕の1場で、人間の男の子のために薬草を探しに行こうと決意して言う「あたしはあたし、あたしはどうしても行きたいのよ。自分でそう思うんだもの、思うようにするわ」という台詞です。本作はマジョリンという女の子の成長物語なのですが、自我が芽生え始めたマジョリンがそれを実行し始める。この瞬間は結構階段の大きな一段なのではないかと思います。その後、終盤の「人間は素敵よ」という台詞含め、全編通して素晴らしい台詞はたくさんあるのですが、私にとってはここが特に大事かな。力み過ぎないよう、ちゃんと言葉のニュアンスをお伝えしようと思います。

若奈 私は、マジョリンの台詞ではないのですが、2幕2場でダビッドが言う「友達ってね。嬉しい時はその喜びを半分コ、苦しい時はその苦しさを半分コにできるんだ」という台詞です。(それまでは)望んでも、得ることが叶わなかった友達という存在。マジョリンの喜びは、これまでにないほど大きいものだと思います。素敵な台詞だと思います。そしてもう一つ、この後の「ありがとう」というナンバーで“言葉にならなければ、心の中でありがとうと言おう”という部分もとても好きですね。

長野 ♪時には言葉にならない、ありがとう~♪ 私も好きですね。

――視覚的には、フライング・シーンが子供たちの目を引くと思います。空を飛ぶ感じはいかがですか?

若奈 体の自由がなくて、動けなくて…。魔法で飛んでいるのに、やっぱり吊られています(笑)。ですが、体勢を崩しては、子供たちに見透かされてしまいますから、舞台稽古で一生懸命頑張ります。

長野 (頷いて)やることがいっぱいありますね。

――振付は飯野おさみさん、加藤敬二さん。他のファミリーミュージカルと比べて、どんな振付ですか?

若奈 歌詞のイメージにマッチした振付ですね。だからこそ、正確に踊って、意味をきちんと伝えなくてはいけません。

『魔法をすてたマジョリン』稽古より

『魔法をすてたマジョリン』稽古より

長野 形であれば鏡を見ながら練習できるけれど、何より“心理と連動するように動くこと”が大切だと(加藤)敬二さんはおっしゃっています。

――お客様たちに、どうご覧いただきたいですか?

若奈 ニラミンコおばさんやブツクサスたちがとても面白いキャラクターです。思わず、子供たちの意識がそちらに行ったり、クライマックスでも魔女のおばさんたちを応援しちゃう子もいるのですが(笑)、まずは人を思いやる心の素敵さを、観ていただけたらと思います。

長野 この作品の軸ですよね。

若奈 台本に書かれた台詞を一つ一つ、一音一音落とさずお届けできたらと思っています。お子さんでも、おじいちゃんおばあちゃんがご覧になっても作品の感動を受け止めてくださるように。特にファミリーミュージカルは普遍的なテーマをもっていますから、幅広く楽しんでいただけると思います。

長野 私もそうですが、「感謝」や「思いやり」の気持ちを忘れてしまうときがありますよね。そうした大事なことを改めて感じていただける、そのようなきっかけになればうれしいです。シンプルな物語だからこそ、いろんな感じ方があると思います。ぜひ、いろんな層の方に観ていただきたいです。

――最後に、お二人の役者としての夢をお聞かせ下さい。

若奈まりえさん。他の出演作に『赤毛のアン』『マンマ・ミーア!』など。(C) Marino Matsushima

若奈まりえさん。他の出演作に『赤毛のアン』『マンマ・ミーア!』など。(C) Marino Matsushima

若奈 劇団に入るまでは、自分はこうなりたい、こう思われたい、そしてどんどん上がっていきたいというものがあったけれど、劇団四季に入ってからは、“居て捨てて語る”という演技論ではないけれど、自分がどうこうというより、作品を通してお客様に感動を届けたい。次の日を生きる原動力に貢献したい、という気持ちに変わりました。

長野 「人生は生きるに値する」、ですよね。

若奈 私を見に来てほしいとかいうような気持ちはありません。四季の作品は素晴らしいものばかりですから、それらにうまく染まるような、求められれば何でもこなせる俳優になりたいです。


長野千紘さん。他の出演作に『桃次郎の冒険』ほか。(C) Marino Matsushima

長野千紘さん。他の出演作に『桃次郎の冒険』ほか。(C) Marino Matsushima

長野 若奈の言いたいことはとてもよく理解できます。私も、このようなチャンスをいただきましたから、全力で自分を捧げています。そういう機会を通して、自分でも気づかない自分に気づかせてもらえることもあるんです。どんどん引き出しを増やしたい。いつでも「絶対成長しよう」という気持ちで取り組む。感謝の気持ちを忘れずに、求められたものと一緒に成長していける俳優になれたらと思っています。

目をきらきらさせながら語ってくれたお二人。まだまだ初々しさいっぱいの彼女たちが全力で演じるマジョリン、きっと観客の心を掴んで離さないことでしょう。

*公演情報*『魔法をすてたマジョリン

■公演日/劇場

・3月22日(土)~4月13日(日)/自由劇場 
・7月19日(土)/ハーモニーホール座間大ホール
・7月24日(木)/所沢市民文化センター ミューズ マーキーホール
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