ちびっこ消防自動車の活躍を痛快に描く『しょうぼうじどうしゃ じぷた』

はしごしゃの「のっぽくん」や、こうあつしゃの「ぱんぷくん」、きゅうきゅしゃの「いちもくさん」など、常に活躍して注目を浴びる同僚たちの存在感に押され、自信を失い気味の「しょうぼうじどうしゃ じぷた」。乗り物絵本の製作に数多く携わった山本忠敬さんの絵が、自分にしかできない役割をきっちりこなす堅実なじぷたの姿を、生き生きと表します。半世紀にわたり子どもたちの人気を集めてきたロングセラー絵本です。


 

働く車たちの適材適所の活躍ぶりの陰で、じぷたは……

何といっても気持ちいいのは、働く車たちの適材適所の活躍ぶり。高い所の火を消して窓から人を助けることができる、のっぽくん。パワーたっぷりの鼻息でどんな熱い火も消してしまう、ぱんぷくん。どこにでも駆けつけてけが人を病院に運ぶ、いちもくさん。特に車好きの男の子には、たまらないでしょう。しかし、みんな自分の能力をアピールしたい気持ちが大きくなりすぎて、相手を思いやる気持ちが少し欠けてしまったようです。いつも、自分が他の車よりどれだけ素晴らしいかを主張し合っているばかりか、じぷたのことを馬鹿にした物言いまでします。そんな3台が火事の度に揃って出動して活躍してくる様子を見て、じぷたは「ぼくだって、おおきなビルのかじがけせるんだぞ!」と悔しくなります。ジープを改良した小さな姿に比べ、立派な機器が備わった仲間たちを見ながら、自分の外見に対する自信も失っていきました。


見直されたじぷたの存在価値

そんな時、ある場所で火事が発生しました。のっぽくんでもぱんぷくんでも、力を発揮しにくい場所。一刻も早く火を消し止めなければ、燃え広がりを食い止めることは困難になります。そこで出動命令が出たのが、じぷた。ジープならではの特性を生かして目的地にすばやく到着しました。じぷたの力の見せどころです!

翌日、一躍まちのヒーローになったじぷた。のっぽくんや、ぱんぷくんや、いちもくさんは、少々決まり悪い思いを味わっているかもしれませんね。仕事に限らず社会全体は、際立つ能力を持っている存在たちだけで成り立っているのではありません。また、みんな同じような性格で同じような考え方だったら、それは真に働きやすいことや生きやすいことになるのでしょうか? 仕事や日々の活動の生産性は増していくのでしょうか? 違う所を認め合い、伸ばし合う意義を、小さい体のじぷたが堂々と示しました。


愛され続けるレトロな絵本

初版は1963年。レトロな雰囲気を感じさせる絵には、華やかさやかわいさとは違った魅力があります。細かい部分まで丁寧に描き込まれた働く車は、表情が感じられます。消防の仕事に関わる人たちは無表情にも見えますが、それが一層、緊迫した雰囲気を醸し出し、必死に働く人々や車たちへの、子どもたちの憧れの気持ちを高めるのかもしれません。『しょうぼうじどうしゃ じぷた』の魅力はこれからも、親から子へ、またその子へとリレーが繰り返されていくことでしょう。
 

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