桜の美しさと主人公のひたむきさに、心華やぐファンタジー

不思議なうさぎの靴屋さんや桜色のバレエシューズ、可愛いチュチュ……この絵本は、どのページにも、女の子の好きなものが散りばめられています。でも、決して女の子に媚を売る、ロマンティックなだけの作品ではありません。心が華やいでくるほどの桜の美しさと共に、バレエを愛する主人公のひたむきさを描いた温かなファンタジー絵本なのです。

『うさぎのくれたバレエシューズ』が少女の願いを叶えていく?!

『うさぎがくれたバレエシューズ』の表紙画像

女の子に届いた桜色のバレエシューズは、とても不思議な靴でした

バレエを習い始めてもう5年になるのに、女の子は上手にバレエを踊ることができません。それなのに、音楽が流れれば、踊りたくて仕方なくなるというのですから、いったいどうしたことなのでしょう。少女の願いはいつもただ1つ、「踊りが上手になりますように!」ということでした。

そんなある日、少女のもとに山の靴屋さんから桜色のバレエシューズが届きました。そのバレエシューズをはくと、不思議なことに遠い風の音や小鳥の声まで聞こえてくるのです。誰かに呼ばれているような気がして、女の子は山の靴屋さんを訪ねていくことにしました。その場所で、少女はうさぎのバレエ団とともにバレエを踊ることになりました。やがて時間が経つと、そこには、上手に踊ろうという気持ちが薄らぎ、心からバレエを楽しむ少女の姿がありました。

この経験を通じて、少女の踊りが上達したのかどうかは定かではありません。けれども、踊りながら風になり、蝶になり、桜の花びらにもなった女の子には、踊ることの楽しさが以前にもまして、心に刻まれたのではないかと思います。ひたむきな少女の想いに応え、彼女に踊ることの楽しさを教えてくれたのは、はたして誰だったのでしょうか?

まるで魔法にかけられたかのような少女の不思議体験は、彼女がバレエを続ける限り心象風景となって少女の胸に残ることでしょう。才能は、好きという気持ちと努力があって、初めて花開くのかもしれない……ふと、そんな思いが浮かぶ絵本なのでした。


【書籍DATA】
安房直子:文 南塚直子:絵
価格:1365円
出版社:小峰書店
推奨年齢:5歳くらいから
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