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16年ぶりにファンドの本数が5000本に

国内投資信託の運用本数が16年ぶりに5000本に乗せました。一時期、2525本まで減少していたことから考えると、投資信託のマーケットが活況であるかのように見えますが、受益者の立場からすれば、決して喜ばしい話ばかりでもなさそうです。

鈴木 雅光

執筆者:鈴木 雅光

投資信託ガイド

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運用ファンドが増えているのはなぜ?

1989年1月から、国内で設定・運用されている投資信託の本数を調べていくと、最高本数だったのが1995年8月の6457本。これに対して最低本数が2004年7月の2525本です。この間、約9年で60%程度、運用本数が減少したことになります。

なぜ、ここまで運用本数が減少したのかというと、当時、ファンドマネジャー1人あたりの運用本数が多すぎるという問題が浮上していたからです。1人で管理するファンドの本数が増えるほど、運用はずさんなものになりがちです。そのため、ファンドの本数を減らそうという話が業界内で持ち上がり、各投信会社は本数の減少に努めました。

ところが、2004年7月以降、運用ファンドの本数は再び増加傾向をたどり始めました。投資信託会社の数が増えれば、それに伴って運用ファンドの本数が増えるのも理解できますが、この10年、投資信託会社の社数は、ほとんど増えていません。そうであるにも関わらず、ファンドの運用本数が増えているということは、ファンドマネジャーの負担が、それだけ重くなっていると考えられます。

では、どうして運用ファンドの本数が増えているのでしょうか。

それは恐らく、投資信託の販売手数料を狙った販売金融機関の営業戦略でしょう。証券会社はインターネット取引の隆盛によって、株式の委託手数料が大幅にディスカウントされ、新たな収益の柱を投資信託に求めるようになりました。また銀行は、本来業務である預貸ビジネスが低迷したこともあり、手数料ビジネスに大きく舵を切りました。

結果、証券会社も銀行も、投資信託の販売に力を入れるようになりましたが、そこで手っ取り早く手数料を稼ぐ方法として販売金融機関が行ったのが、乗り換え営業です。

2007年6月、投資信託全体の純資産残高は81兆9767億円で、運用ファンドの本数は2862本でした。これに対して2014年2月のそれは、79兆6925億円で5013本。純資産残高がほぼ横ばいであるのに対し、運用ファンドの本数は75%も増えています。もちろん純資産残高ベースですから、そこには評価損益も加わります。

したがって、純資産残高が横ばいだからといって必ずしも新規資金が全く入っていないとは言えませんが、ファンドの本数がこれだけ増えているのに、純資産残高が横ばいであれば、やはり乗り換え営業が行われていたと考えるのが普通でしょう。

乗り換え営業が行われれば、既存のファンドから資金が流出し、運用がままならなくなる。しかも、新規設定が増えてファンドの運用本数が増え、ファンドマネジャーの負担増からずさんな運用が行われる恐れがある。結果、さらに運用成績が低迷する、という悪循環に入っているようです。

ファンドの運用本数増は決して喜ぶべきことではありませんし、これから投資信託を買うならば、販売金融機関の乗り換え営業の餌食になっていないファンドを見つけて購入する必要があります。

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